郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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鶴岡・酒田 現状と課題  ㊤指標から見た市勢
地域経済縮小の影響随所に
事業所、販売額など大幅減

 任期満了に伴う鶴岡市長選と鶴岡市議選は10月8日の告示(同15日投開票)が1カ月後、酒田市議選は10月22日の告示(同29日投開票)が1カ月半後にそれぞれ迫った。景気低迷の影響から浮上できずにいた地域経済にも回復の兆しが見え始めてきたが、それをどう成長軌道につなげていくのか、人口減少にどう対応していくのかなど待ったなしの課題が山積している。市長、市議選を前に、両市の現状と課題を各種の指標(下表参照)から探ってみた。(本紙選挙報道取材班)

事業所数 県内での経済優位薄れる

鶴岡・酒田両市勢の指標の推移
 地域経済が置かれている深刻な状況は、両市の事業所数と従業者数の推移から読み取ることができる。
 現在の「経済センサス基礎調査・同活動調査」と06年まで実施していた「事業所・企業統計調査」では調査手法が異なるため、比較は参考の域を出ないが、16年経済センサス活動調査結果の速報などによると、同年6月1日時点の鶴岡市の事業所数は6562カ所、酒田市は5622カ所。10年前の06年からそれぞれ942カ所12・6%、982カ所14・9%減った。
 市内の事業所で働く従業者数も、鶴岡市が5万5241人、酒田市が4万9389人と、06年からそれぞれ2638人4・6%、1056人2・1%減少した。
 このうち事業所数の増減率を山形、米沢、天童、新庄に鶴岡と酒田を含めた県内上位6市間で比べると、米沢市が06年比735カ所14・0%減、新庄市同281カ所10・6%減、山形市同969カ所6・9%減、天童市同150カ所4・7%減。酒田市の減少率は県内上位6市の中で最も高く、鶴岡市は酒田市、米沢市に次ぎ3番目の高さだった。
 こうした指標からも、鶴岡、酒田両市の県内市町村の中での経済的な優位性が薄れてきている実態が浮き彫りになっている。


製造品出荷額等 鶴岡は県内順位下げる

 製造品出荷額等の2005〜14年の推移を見ると、両市の間で明暗が分かれた。
 鶴岡市は、14年の製造品出荷額等が05年に比べ11・6%減った。製造品出荷額等が県内上位5位以内の米沢、東根、山形、酒田のこの間の増減率を見ると、米沢市が24・4%、山形市が11・1%減ったのに対し、東根市は19・7%、酒田市は9・9%増えた。
 この結果、05年に米沢市、東根市に次いで出荷額で県内3位だった鶴岡市は、酒田市に逆転を許し、14年は4位に落ち込んだ。
 要因に森屋健一・鶴岡市商工課長は①半導体を巡る世界的な環境変化で、大手電子関連企業などを中心に、電子部品・デバイス・電子回路製造業の出荷額が約450億円減った②生産拠点の海外移転が進むなどして、衣服製造を含む繊維工業の出荷額が約83億円減った―ことを挙げる。
 森屋課長は「機械製造や食料品製造の出荷額は増えており、慶応義塾大学先端生命科学研究所を中心にしたバイオ関連企業の躍進に期待している」と話す。
 14年の同市の製造業の従業者4人以上の事業所数は278事業所、従業者数は1万1122人。05年と比べ81事業所22・6%、2624人19・1%減った。

酒田は県内3位に上昇

 酒田市は、14年の製造品出荷額等が05年に比べ9・9%増えた。前述した製造品出荷額等が県内上位5位以内の4市と比べると、05年に米沢市、東根市、鶴岡市、山形市に次いで5位だった酒田市は、14年には山形市、鶴岡市を抜いて3位に上昇した。
 その要因を丸藤広明・酒田市商工港湾課長は①企業立地件数が順調に増え、それに伴い製造品出荷額等も増大した②花王や東北エプソン、TDK、本間ゴルフ、アライドマテリアルといった既存企業の出荷額が増えている―と説明する。
 丸藤課長は「立地企業件数は直近3年間のほうが増えており、15年度以降の製造品出荷額等はさらに増加していくものと推測している」との見方を示す。
 14年の同市の製造業の従業者4人以上の事業所数は204事業所、従業者数は8486人で、05年と比べ63事業所23・6%、541人6・0%減少した。


企業誘致・立地 鶴岡は7年間に新設4社

 鶴岡市商工課によると、同課に記録のある2011年度以降の同市の企業立地数は計17社に上った。
 このうち市外からの進出企業は、11年の肥料等製造1社、14年の電子部品等製造2社、16年の金属製品製造1社の計4社。新規創業は13年の繊維製造1社、木製品製造1社、発電1社、15年の繊維製造1社の計4社。その他の9社は既存企業が設備を増設したもの。計17社の従業員数は17年4月1日現在、計1293人。
 市内11カ所の工業団地は、鶴岡大山と庄内あさひを除いて完売した。鶴岡大山は23・5ヘクタール中15ヘクタールが、庄内あさひは2・4ヘクタール中0・9ヘクタールが売れ残っているが、9件の分譲交渉が進んでいる。

酒田は13年間に新設19社

 酒田市商工港湾課によると、2005〜17年度の13年間に、市内で操業を開始した県外・市外資本の新設立地企業数は計19社だった。この間の市内既存企業の増設は20社、移設は6社だったので、それらを含め本社や生産工場などを整備した企業数は計45社あった。
 この45社の業種別内訳は、製造業が24社と全体の半数以上を占め、以下、リサイクル関連企業7社、食品製造業6社、倉庫業と印刷業が各2社、再生可能エネルギー関連企業、コールセンター、運送業、卸売業が各1社。操業時点での新規雇用見込みは計1697人。
 市内企業では18年度以降も、再生可能エネルギー関連企業、製造業、食品製造業の各1社が操業を予定している。
 企業立地が進んだ要因に、丸藤広明・酒田市商工港湾課長は①国内トップクラスの優遇制度②酒田京田西工業団地の分譲価格が割安③企業誘致の実現に向けた市のさまざまな対策―などを挙げる。
 そして「酒田京田西工業団地と酒田臨海工業団地を中心に、企業の立地は進んだと評価している。花王酒田工場による紙おむつの増産などで酒田港が活況を呈し、運送業や倉庫業に加えバイオマス発電、太陽光発電などの再エネ関連企業の立地が進んだことも大きかった」と話した。


年間商品販売額 7年で酒田26%、鶴岡11%減

 酒田市は、14年の卸売業と小売業を合わせた年間商品販売額が07年に比べ26・0%も減少した。
 内訳は卸売業が1281億4700万円で同37・2%減、小売業が1156億2700万円で同7・9%減。07年に山形市に次いで2位だった酒田市の県内順位は14年も2位で変わらなかったが、3位鶴岡市との差は600億円近くも縮小した。
 減少した最大の要因に酒田市商工港湾課の担当者は、08年4月に庄内経済連が合併して全農山形庄内本部となったため、取扱販売額が酒田市から山形市に付け替えられてしまったことを挙げる。
 さらに①人口減少による市内での購買力の低下②通信販売やインターネット通販の普及③流通業界の統廃合の影響―などを指摘した。
 商店数は1346店舗と07年比511店27・5%減った。卸売業で65店14・8%、小売業で446店31・5%それぞれ減った。従業員数は8049人と07年比2839人26・1%減少。卸売業で732人21・6%、小売業で1818人25・2 %減った。
 一方、鶴岡市は、14年の年間商品販売額が07年に比べ11・9%減少した。内訳は卸売業が698億7600万円で同17・4%減、小売業が1248億3900万円で同8・5%減。07年に山形市、酒田市に次いで3位だった県内順位は14年も3位で変わらなかった。
 年間商品販売額が減った要因として鶴岡市商工課の担当者は①人口減少と消費行動の変化による影響が大きい②飲食料品・鮮魚・酒・菓子パンを扱う小売店が減った③ドラッグストアの出店が増えた④個人商店を中心に小規模店舗の廃業が増えた―ことなどを挙げる。
 商店数は1473店舗と07年比606店29・1%減った。従業員数は8289人と07年比2995人26・5%減少した。


農業産出額 鶴岡は園芸で回復傾向

 鶴岡市の2015年の農業産出額は県内1位、全国では32位となった。合併した05年に比べ6・8%増えた。枝豆とメロンを含む野菜・果実などの園芸作物を導入した複合経営化を進めてきたことが影響した。しかし、米価が高値安定していたピーク時の1985年の457億円と比べると、6割程度に落ちている。
 15年の農業産出額のうち米の産出額は122億9千万円で43・4%を占める。05年は158億8千万円で59・9%を占めていたが、16・5ポイント低下した。その分、野菜が95億8千万円と05年度の53億円から80・8%増え、果実が19億8千万円で同12億3千万円から61・0%増えた。この二つの産出額は全体の40・9%に急伸した。
 鶴岡市ではさらに園芸分野を伸ばし、全国30位以内となる農業産出額300億円を目指す。園芸作物を生産するための機械化の整備やハウスなどの施設導入に、国や県の補助事業を活用できるよう支援を強める。
 一方、酒田市の15年の農業産出額は05年を2・5%下回った。県内2位は変わらないが、県内13市の中で、05年比が減少したのは長井市16・1%減、山形市10・4%減、米沢市2・2%減と酒田市の4市だけだった。ピークだった85年の334億円の6割程度と低迷している。
 15年の農業産出額に占める米の産出額は89億1千万円で46・1%と、05年の54・0%から減ったものの、まだ依存度は高い。
 酒田市も米価に左右されないように、園芸作物の産出額を増やしてきた。野菜は48億5千万円と05年より21・6%増え、果実は7億6千万円と同61・7%増え、計56億1千万円は産出額全体の29・0%と05年の22・5%から6・5ポイント増えた。
 ハウスなど生産資材を導入する際の国県の補助金に市独自の補助金を上乗せし、国県の事業に該当しないものを支援する。


観光客数 鶴岡は600万人台維持

 鶴岡市の2016年度の観光客数は06年度に比べ26・7%増えた。リーマンショックの影響で08年度に464万500人まで減ったが、09年の映画「おくりびと」で回復するも、11年度は東日本大震災で528万9200人に落ち込んだ。
 14年度は、新加茂水族館の開業やユネスコ食文化創造都市の認定、JR東日本の「山形デスティネーションキャンペーン」などが重なり、過去10年間で最多の738万6300人を記録した。15年度以降は減少傾向だが600万人以上を維持している。
 同市では食や伝統文化、信仰、自然体験などテーマを絞った観光プランと、周辺地域と連携した広域観光を充実させる方針。また東京オリンピックに向け、台湾や東南アジア諸国と、出羽三山の人気が高い欧米諸国からの誘客を進めていく。

酒田は10年間に12%減

 酒田市の2016年度の観光客数は06年度から12・3%減少した。同市の施設入込数調査を見ると、酒田夢の倶楽は16年度71万9442人で06年度から5・4%増えたが、さかた海鮮市場は39万8528人で40・3%減。旧鐙屋は1万779人で55・2%減などと軒並み減少している。
 映画「おくりびと」を撮った旧割烹小幡が公開された09年度を境に、年間300万人を切った。
 鳥海山・飛島ジオパークや北前船寄港地の日本遺産認定もあったが知名度が低い。市では来年の大河ドラマ「西郷どん」に向け南洲神社への呼び込みや、31年の新潟・庄内デスティネーションキャンペーンの対策も考えていく。外国クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの来年7月寄港に向け、今年10月に入港する秋田港を視察し対策を練っていく。
 県内主要4市の観光客数の16年と06年を比べた伸び率では、山形30・6%増、鶴岡26・3%増に対し、酒田12・3%減、米沢20・7%減となった。


市内総生産 市内総生産、市民所得

 鶴岡市の14年度市内総生産額は05年度比8・0%減となった。07年度には4610億円に拡大したが、08年度中のリーマンショックを機に09年度に4111億円に落ち込み、13年度は4214億円まで回復。14年度は2年ぶりのマイナス成長となった。
 酒田市の14年度市内総生産額は05年度比4・1%減。01〜14年度でみると、01年度の4393億円が最高なので長期低落傾向といえる。07年度までは4千億円を超えていたが、東日本大震災があった11年度に3592億円まで落ち込んだ。県内順位も01年度は2位だったが、02年度から3位、06年度から4位と後退。08年度以降は米沢市の後退で3位に浮上した。10〜14年度の5年間はプラス成長が4回と堅調。

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