郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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鶴岡・酒田 市勢を見る 各種選挙を前に[2]
経済指標 低落傾向否めず
県内主要市での優位性薄れる

 鶴岡、酒田両市は、2005年の市町村合併以降に県内での経済的地位、その影響力を大きく変えた。今後に控える鶴岡市長選と同市議選、酒田市議選、次期衆院選は、両市の将来の姿を占う大事なものとなるが、新型コロナの影響で地域経済は疲弊し、再生に向けた取り組みは待ったなしとなる。山形、米沢、天童、東根、新庄の県内主要5市の各種経済指標などと比較しながら、両市の合併からこれまでを検証した。(本紙取材班)

事業所数・従業者数   事業所7年間に10%超減

 国の経済センサス基礎調査と活動調査に基づいて県がまとめた「山形県の事業所」(民営事業所)によると、鶴岡市の2016年6月1日の事業所数は6545事業所、酒田市は5615事業所=下表参照=。
 鶴岡市の09年同日は7304事業所で、この7年間に759事業所10.4%減った。それに伴い市内の該当事業所で働く16年同日の従業者数も5万4958人と、09年同日の6万95人から5137人8.5%減っている。
 酒田市の09年同日は6421事業所で、同806事業所12.6%減った。従業者数も4万8486人と、5万1736人から3250人6.3%減っている。
 鶴岡、酒田両市を除く山形、米沢、天童、東根、新庄の県内主要5市の、同じ7年間の事業所増減数と事業所増減率は、東根市111事業所5.8%減、天童市131事業所4.1%減、新庄市229事業所8.8%減、米沢市590事業所11.6%減、山形市1254事業所8.7%減となっている。
 県内主要市の中で、事業所減少率は酒田市が最も高く、次いで米沢市、鶴岡市、新庄市、山形市の順。事業所減少数も、酒田市は山形市に次いで多く、以下鶴岡市、米沢市、新庄市が続く。
 同じ7年間の従業者増減数と従業者増減率は、天童市431人1.5%増、東根市188人0.9%減、新庄市635人3.5%減、山形市5890人4.6%減、米沢市3809人8.4%減だった。
 県内主要市の中で、従業者減少率は鶴岡市が最も高く、次いで米沢市、酒田市、山形市が続く。従業者減少数も鶴岡市は山形市に次いで多く、以下米沢市、酒田市、新庄市の順だった。
 このように鶴岡、酒田両市の事業所減少率と従業者減少率の高さ、事業所減少数と従業者減少数の多さは、県内主要市の中でも上位に位置する。人口減少を背景に地域経済が縮小する中、産業競争力をどう維持、強化していくのかは、両市の将来を大きく左右する課題となっている。

表1

医療、福祉の従業者が急増

 鶴岡、酒田両市の16年6月1日の産業大分類別従業者数をみると=下表参照=、鶴岡市では「製造業」の従業者が1万2615人で最も多く、全産業の23.0%を占める。
 以下「卸売業、小売業」1万39人、全産業に占める構成比18.3%、「医療、福祉」8001人14.6%、「建設業」5027人9.1%、「宿泊業、飲食サービス業」4995人9.1%、「サービス業」3350人6.1%の順だった。
 鶴岡市では「製造業」「卸売業、小売業」「医療、福祉」の上位3産業で全産業の5割超を占める。7年前の09年6月1日から大半の産業で従業者は減っているが、「学術研究、専門・技術サービス業」と「教育、学習支援業」、「医療、福祉」では従業者が増えている。
 一方、酒田市では「卸売業、小売業」の従業者が9595人で最も多く、全産業の19.8%を占める。
 次いで「製造業」9047人18.7%が多く、「医療、福祉」7206人14.9%、「建設業」5315人10.1%、「サービス業」3985人8.2%、「宿泊業、飲食サービス業」3482人7.2%が続く。
 酒田市では「卸売業、小売業」「製造業」「医療、福祉」「建設業」「サービス業」の上位5産業で全産業の7割超を占める。鶴岡市と同様、従業者は09年6月1日から大半の産業で減っているが、「製造業」と「医療、福祉」、「複合サービス」では従業者が増えている。
 鶴岡、酒田両市を除く山形、米沢、天童、東根、新庄の県内主要5市でも、高齢化を背景に06年同日から「医療、福祉」の従業者が急増している。半面、情報サービス・インターネット付随サービス業からなる情報通信業の16年6月1日の従業者は、鶴岡市257人、酒田市205人、山形市2543人、米沢市359人、天童、東根両市各34人、新庄市61人。新産業の育成や起業には欠かせない情報通信業では、県内主要市間で集積に濃淡が見られた。
 鶴岡、酒田両市を含む県内主要市の産業構造はそれぞれだが、第1〜3次産業でいかに付加価値の高いものを開発・定着させていくのかが重要となってくる。

表2

グラフ1

新設事業所、酒田で鈍化

 県内主要7市の新設事業所数を経済センサス基礎調査で見ると、10〜19年の10年間の累計では山形市2766件、鶴岡市1234件、酒田市909件、米沢市784件、天童市638件、新庄市403件、東根市277件、とほぼ人口規模に比例した。
 7市の中での新設数の順位を見ると、酒田市は07〜09年の3年分では山形市に次いで2番目に多かったが、10〜14年の5年分では鶴岡市に抜かれて3番目に落ち、15〜19年の5年分は米沢市との差が8件しかなくなった=左グラフ参照=。
 県全体の新設総数に占める構成比でも、酒田市は10〜14年の9.8%から15〜19年には8.6%へと減らしたが、鶴岡市は10〜14年の11.7%から15〜19年は14.7%へと増やした。
 産業大分類別で見ると、酒田市は特に「卸売業、小売業」が10〜14年の184件から15〜19年には43件に減り、「宿泊業、飲食サービス業」も10〜14年の94件から15〜19年には29件に減った。
 鶴岡市は「卸売業、小売業」が10〜14年の188件から15〜19年には78件へ、「宿泊業、飲食サービス業」が10〜14年の138件から15〜19年には68件へと減ったが、減り幅は酒田市に比べて小さい。労働者派遣や警備などを含む「サービス業」は10〜14年の43件から15〜19年には82件へと大幅に増えた。


市内総生産・市民所得   鶴岡市は2位、酒田市3位

 経済活動を通じて生産された商品やサービスの産出額から、原材料や部品代などの中間投入を差し引いたものが付加価値で、これは法人や個人に所得として分配される。法人や個人の所得はさらに消費などの形で支出され、経済は循環する。
 県内主要7市の1年間に生じた付加価値の総額「市町村内総生産」と、分配された所得の総額「市町村民所得」の、05〜17年度の5年ごとの推移は下表の通り。
 市町村内総生産の順位は人口規模にほぼ準じていて、1位山形市、2位鶴岡市、7位新庄市は不動。10年度以降、酒田市は米沢市を抜いて3位に浮上している。天童市と、成長が目覚ましい東根市が5位争いを繰り広げている。
 17年度と05年度を比較した経済成長率は、1位東根市27.8%、2位天童市24.3%、3位鶴岡市20.3%、4位山形市5.6%、5位酒田市2.4%、6位新庄市マイナス4.6%、7位米沢市同9.9%。
 一方、市町村民所得の順位は1位から7位まで変わっていない。鶴岡市が2位、酒田市が3位。17年度と05年度を比べた伸び率は、1位東根市31.8%、2位天童市18.6%、3位山形市15.1%、4位鶴岡市14.9%、5位新庄市8.9%、6位酒田市8.4%、7位米沢市4.4%の順。酒田市の伸び率は新庄市よりも低く、米沢市と同様に低迷している。

表3


製造品出荷額等   鶴岡市、酒田市も伸びる

表4

 県工業統計を基に、製造品出荷額や加工賃収入、修理料収入など、製造業の一年間の生産活動の状態を表す「製造品出荷額等」の県内主要7市の05〜19年の推移は左表の通り。
 順位に大きな変動は見られない。1位米沢市、2位東根市、6位天童市、7位新庄市は不動。鶴岡市は15年の4位を除き3位。山形市は05年が4位、10年以降は5位。酒田市は05年5位、10年4位、15年3位、19年4位と安定していない。
 19年と05年を比べた伸び率は、1位鶴岡市30.6%、2位東根市29.6%、3位酒田市14.7%、4位山形市2.6%で、ここまでがプラス圏。以下5位天童市マイナス3.9%、6位新庄市同10.2%、7位米沢市同29.5%の順。
 製造品出荷額等の増減には、世界的な需要と供給の変化が影響する。鶴岡市は中央工業団地の生産が好調だったことが寄与したとみられる。鶴岡市ほどではないが、酒田市の伸び率も高い。東根市の躍進、山形市と天童市の底堅さがうかがえる。米沢市は1位を守るが、低迷は否めない。


農業産出額   農家減り担い手確保急務

グラフ2

 県内主要7市の農業産出額(推計)は、伸び率に違いはあるものの、山形市を除いた6市で2005年より18年が増加している=右表参照=。米から果樹や園芸作物などに転換してきたことが、産出額向上に影響していると考えられる。
 鶴岡市の18年農業産出額は05年比22.9%増えた。同市農政課では、産出額に占める米の割合が05年の59.9%から18年度は43.2%へと16.7ポイント下がり、枝豆やメロン、花などの園芸作物の割合が増えたことが要因と説明する。
 今後さらにミニトマト、キュウリ、アスパラ、ニラ(露地)、ネギなどの産地化を進め、ユネスコ食文化創造都市の認定を生かした農産物のブランド化を進めると言う。
 一方で、農家数は05年の6416人から15年は4972人へと22.5%減り、基幹的農業従事者は同6496人から5453人へと16.1%減り、減少の一途をたどっている。特に10年から15年では毎年140人ずつ減った計算となり、減少の速度は2倍に加速している。
 担い手である認定農業者は、20年が1520人でピークだった15年の1760人から13.6%減り、高齢化も進んでいる。そのため、新たな担い手となる新規就農者を増やすことが急務となっている。
 鶴岡市では担い手育成として、親元就農や跡継ぎのいない農家を第3者が継ぐ新規参入などの新規就農と、農業法人に就職して農業に従事する雇用就農の受け皿を増やすための法人化とを支援していく。同市農政課では「産地化と担い手の育成を両輪として、地道に考えられることをしていくしかない」と話している。
 酒田市の18年農業産出額は05年比4.8%増にとどまった。鶴岡市同様に米の割合は05年の54.0%から18年は45.8%へと8.2ポイント下がった。酒田市農政課では、野菜や果樹など園芸作物の割合が増加し、畜産はほぼ横ばいで飼養頭数は増えていると説明する。水田の畑地化は難しい面もあるが、さらに園芸作物の産地化を進めれば、産出額の伸び代は大きいと話す。
 農家数は05年の4440人から15年は2477人に44.2%減った。農業就業人口は05年の6985人から15年には3130人へ55.2%減と大きく減った。高齢化率は15年に54.6%となった。
 一方で経営耕地面積の規模を見ると、大規模化が進み、農産物販売金額規模は1500万円以上とする経営体が増えている。大規模化することで機械化や効率化が進み、少ない農業就業人口で今ある農地を保っている現状がみえる。
 酒田市農政課では、新たな後継者を増やしていくことが鍵と言い、市内での就農・希望者を対象にした「酒田もっけ田農学校」を10月に開校する。また国、県の事業を使って農業資材と機械の購入を補助し、さらに規模拡大を支援する。


年間商品販売額   酒田、経済連合併で25%減

 県が公表している「山形県の商業」によると、2016年の卸売業と小売業を合わせた年間商品販売額は、鶴岡市が2172億3100万円、酒田市が2459億759万円=下表参照=。  鶴岡市は07年に2209億6343万円だったので、9年間に37億3243万円1.7%減った。商店数は16年に1773店と、07年より306店14.7%減った。従業者数は16年に9796人と、同1073人9.9%減っている。
 酒田市は07年に3295億4978万円だったので、同836億4219万円25.4%減った。商店数は16年に1611店と同246店13.2%減った。従業員数は16年に9453人と1146人10.8%減っている。
 酒田市の年間商品販売額が大幅に減ったのは、08年4月に庄内経済連(当時)が合併して全農山形庄内本部となり、卸売業に含まれる同本部の取扱販売額が、それまでの酒田市から山形市に付け替えられたことが最大の要因となっている。
 鶴岡、酒田両市を除く山形、米沢、天童、東根、新庄の県内主要5市の、同じ9年間の年間商品販売額の増減額と増減率は、天童市169億5554万円9.8%増、東根市66億4919万円9.0%増、新庄市88億4276万円9.2%減、米沢市122億435万円6.2%減、山形市300億2727万円2.7%減だった。
 県内主要市の中で、年間商品販売額の減少額は特殊な事情のあった酒田市が最も多く、以下山形市、米沢市、新庄市の順。減少率も酒田市が最も高く、新庄市、米沢市、米沢市が続く。
 人口減少に伴う購買力の低下やインターネットを利用した通信販売の普及、流通業界の統廃合など商業を取り巻く環境が大きく変化する中、県内主要市では天童、東根両市とそれ以外の5市で明暗が分かれた。

表5


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