建設・採石業者の川越工業(株)(秋田県にかほ市、川越康平代表取締役社長)が、鳥海山麓の遊佐町吉出臂曲地内の所有地で岩石採取事業を計画し、同町に事前協議書を提出したことを受け、町は4月23日夜、町役場で町民意見交換会を開いた。町民など約70人が参加し、参加者からは計画に反対する意見や、同社への不信感を訴える声が相次いだ。
事業者への不信感を訴える声が続出した意見交換会
当日は町側が、事業面積は事業場の敷地2万5646平方メートルのうち8883平方メートルで、岩石採取の開始予定日は今年8月1日などと、同社の事業概要を説明した。
同社は秋田大学に依頼したボーリング調査の分析と考察を事前協議書に添付しているが、町はこの日の意見交換会で「十分に長期的な安全性を考慮しても、標高329メートル(掘削深度34・4メートル)までなら、地下水は湧出することなく、地下水への影響を及ぼさずに掘削は可能と考えられる」などとする添付内容を公表した。
町条例「遊佐町の健全な水環境を保全するための条例」では、地表から地下2メートルの深さを超える土石の採取を認めていない。これに対し同社は、最大30メートルの深さまで岩石を採取する考えを示している。
意見交換では参加者から「2メートル以上掘るという段階で規制対象事業になる。町は条例と規則にのっとって毅然とした態度で臨んでほしい」「前回事業地の緑化がなされていない。(緑化が)完了してから次に進むべき」「前回事業地の植栽ができないのであれば、次の事業はさせないという姿勢で臨んでほしい」「まだ完了していない事業があるのに、新しい事業計画を出すこと自体、信用できない不誠実な会社」などの意見が出た。
これに先立つ同月18日夜には、同社が前述の町条例に基づく住民説明会を、町生涯学習センターで初めて開いた。町民など約80人が参加し、同社の神坂智行営業部長らが出席した。
参加者からは「以前の掘削によって、(事業予定地の)周辺は水が抜けた状態。そこでボーリング調査を行い『地下水は湧出しない』と説明するはおかしい」「岩石の採掘量はどのくらいか」「岩石を運ぶ作業車両はどのルートを通るのか」などの意見や質問が出た。
これに対し神坂課長らは「質問や意見は事業の内容に絞ってほしい」「答えられないので持ち帰り、できるだけ早く町に回答する」などと繰り返し答えたため、参加者からは「質問に答えられないのは問題。(我々が)集まっているのは何のためなのか」と厳しく批判する声が上がった。
同社は16年にも今回の事業予定地の隣接地で採石事業を計画したが、町は同条例の規制対象事業に該当するとして認めなかった。同社は町の処分を不服として処分の取り消しを求めて提訴したが、最高裁は22年に同社の訴えを棄却している。
町は今後、町民意見交換会や町水循環保全審議会で出た意見を踏まえ、5月10日までに規制対象事業に認定するか否かを判断する。