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酒田港 積出港の誘致競争が激化
ライバルは秋田、仙台塩釜、釜石
自動車産業の完成車・部品の積み出し港に名乗りを挙げた酒田港だが、秋田港、仙台港、釜石港も虎視眈々とその座を狙っている。今後、港を持つ山形、秋田、宮城、岩手の四県が東北地方での物流拠点港を目指し、激しい誘致競争を繰り広げるのは必至だ。(編集主幹・菅原宏之)
秋田港 ロシア航路武器に
国土交通省の東北地方整備局は今年二月、自動車部品などのロシア向け輸送で秋田港を活用できないかどうかを探るため、「環日本海シーアンドレール」構想の実証実験を行った。
同構想は、鉄道で秋田港まで運んだロシア向けコンテナを船に載せ、ロシア沿海州の港からシベリア鉄道を利用してロシア内陸部に運ぶというもの。ロシアでは昨年十二月にトヨタがサンクトぺテルブルクで工場を稼動。平成二十一年には日産自動車、スズキも同地での操業を計画している。
日本―モスクワ間の場合、輸送日数は海上輸送で三十五〜四十日だが、シベリア鉄道を利用すれば約二十五日に短縮できるので、一定の需要が見込めると読んだ。
秋田県流通貿易課によると、実験では自動車部品を詰めた四十フィートコンテナを仙台港駅から列車に積み込み、北上線から奥羽本線を通るルートと、東北本線から青森を経由して奥羽本線を通るルートの二つのルートで秋田北港駅まで輸送。その後、ロシアのコンテナ船に積み替え、シベリア鉄道に接続する極東ロシアのボストーチヌイ港に運んだ。
その結果、輸送中の振動が貨物に与える影響や各拠点での積み替え時間などで大きな問題点は見られなかったが、トヨタ側から「現段階では、名古屋から船で運ぶよりも、コストが高いとの指摘があった」(秋田県流通貿易課)という。
東北地方整備局が秋田港で実証実験を行った背景には、同港がコンテナヤード近くまで臨海鉄道の線路が敷設されていること。加えて、地元がロシア沿海州との航路誘致に熱心に取り組んでいることがある。
秋田県流通貿易課では「最優先課題は秋田港のセールスポイントをつくること。まずは極東ロシアと秋田港の間にコンテナ定期航路を新設し、それを武器に自動車メーカー各社への働きかけを強めたい」と、今後の方針を語っている。
県知事の熱意がカギ
秋田、宮城、岩手の三県に比べ、これから酒田港の利用促進に向けた戦略をまとめる山形県の取り組みが出遅れている感は否めない。
しかし、「トヨタが最も重視する要素はコスト」(酒田市・飽海郡区選出のある県議)との指摘もあり、山形県が大胆な施策を打ち出せば、積み出し港になる可能性はあると見る向きもある。
物流問題に詳しい酒田市内のある関係者は、具体的に▼自動車産業関連で酒田港に入港する船舶の着岸料を無料にする▼酒田港の荷役業務を二十四時間体制とし、業者を補助金などで支援する―ことを挙げた。
この関係者は「宮城県にはセントラル自動車、岩手県は東芝、秋田県にはTDKと、大規模工場の進出計画が相次いでいる。山形県に企業を誘致するためには、酒田港の利用促進が不可欠。県知事がどこまで熱意を持ってトヨタ側に働きかけるかが、成否の鍵を握る」と話す。
鈍い県、市の動き
セントラル自動車は昨年十月、本社と工場を仙台市近郊の第二仙台北部中核工業団地(大衡村)に移転することを正式に発表した。移転実現には、独自課税「みやぎ発展税」を導入して工場新設企業に支払う企業立地奨励金の上限額を、十億円から四十億円に拡充するなど、宮城県の周到な誘致戦略があったといわれる。
関係者によると、宮城県での誘致成功を受け、山形県が最初に酒田港を製品積み出し港として利用するよう、セントラル自動車側に働きかけたのは昨年十二月のこと。斎藤弘県知事が同社の石井完治代表取締役社長と会ってトップセールスを行い、石井社長から「酒田港の利用を検討する」との回答を得た。斎藤知事は今年二月上旬、庄内地域の有力経済人を通して冬柴鐵三国土交通大臣に、酒田港の利用を求める要望書も提出。トヨタ自動車にも出向いて、PRに努めている。
一方、酒田市でも今年三月、阿部寿一酒田市長と斎藤成徳酒田商工会議所会頭が仙台市内でセントラル自動車の事業責任者と会い、情報収集と酒田港利用の働きかけを行った。
しかし、斎藤知事が酒田港利用で関係者への働きかけを始めたのは、セントラル自動車が工場の移転を公表した二カ月後。酒田市の首長、経済界のトップが動いたのは五カ月後だった。
このため、酒田市民の間からは「情報収集で遅れをとった上に、動きも鈍い」と、県と市の対応を批判する声が上がっている。
仙台港 車置き場を拡張
仙台塩釜港では、関東自動車工業岩手工場で生産した完成車など、年間二十万台程度を積み出しているといわれるが、セントラル自動車が操業すれば車を置くスペースが手狭になるのは確実となっている。
このため、宮城県では現在利用している約七へクタールの完成車置き場の近接地を利用して、二倍の広さに完成車置き場を拡張する検討を進めている。
今後について宮城県港湾課では「仙台港は現在、トヨタグループの積み出し港として利用してもらっている。こうした実績を踏まえ、これからもトヨタ側から要望があれば可能な限り受け入れていきたい」と話す。
釜石港 課題は接続道整備
釜石港は関東自動車工業岩手工場の積み出し港として、またトヨタの完成車陸揚げ港として利用されている。取扱台数は平成十八年実績で年間約二万三千台。埠頭用地の拡張、アクセス道路のさらなる整備が課題となっている。
岩手県企業立地推進課では「トヨタ側にはこれまでも、水深十一メートル岸壁と埠頭用地が整備済みであること、年間を通し二十四時間の荷役体制であることなどをPRしている」と話している。
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