郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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本紙新春座談会
新潟庄内DCと東京五輪に向け誘客準備を
「観光客と交流人口を増やして庄内活性化」㊤

 庄内は観光などの交流人口を増やして経済を活性化する絶好の機会を迎えようとしている。2018年には本県を舞台に国連世界観光会議が開かれ、19年の新潟・庄内デスティネーションキャンペーン(DC)、20年の東京五輪・パラリンピックと続く。日本遺産には庄内から3件が登録され、外国クルーズ船が酒田港に入港するなど明るい話題は多い。一方で高速交通網や受け入れ態勢には課題が多い。交流人口の拡大に取り組む各分野の方々に現状と展望を話し合ってもらった。連載1回目は新潟・庄内DCと東京五輪に向けた取り組みを伺った。司会は編集部・土田哲史。文中敬称略。

訪日外国人、東北へは1%のみ

小野 真哉氏
山形県庄内総合支庁長
小野真哉氏(59)
2008年に県庄内総合支庁産業経済企画課観光振興室長、11年県商工労働観光部観光経済交流局観光交流課長、13年同局長、16年同部観光推進監兼同局長などを歴任。17年より現職。

酒井 忠順氏
旧庄内藩主酒井家第19代、致道博物館理事副館長
酒井忠順氏(43)
鶴岡市生まれ。羽黒高校、獨協大学経済学部経営学科卒、同大学院経済学研究科修士課程修了。立教大学学芸員課程修了。09年松岡物産(株)(現:(株)荘内藩)代表取締役。16年致道博物館理事副館長。

永田 斉氏
酒田市総務部市政推進調整監兼危機管理監
永田斉氏(59)
酒田市生まれ。酒田商業高校、中央大学経済学部卒。1981年酒田市役所入庁。税務課、議会事務局、総務課、企画調整課、高齢福祉課、商工港湾課などを経て現職。市長の特命事項、各部門の調整を担当。

中原 浩子氏
東北公益文科大学観光まちづくりコース日本語助教兼特任講師
中原浩子氏(56)
広島県出身。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。山形県観光審議会委員、鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会アドバイザー、酒田コミュニケーションポート(仮称)整備検討委員。

大川 光二氏
(株)庄交コーポレーション常務取締役
大川光二氏(58)
鶴岡市生まれ。山添高校卒。2002年庄交商事(株)入社。10年1月(株)庄交コーポレーション本部総務部長、10年10月同社執行役員、12年同社庄交トラベル事業部代表執行役員、14年同社取締役。16年より現職。

熊谷 芳則氏
(一社)みちのくインバウンド推進協議会理事長
熊谷芳則氏(60)
1957年12月生まれ。99年4月(株)ホテルリッチ酒田代表取締役就任。酒田市ホテル振興協議会長、酒田地区防災協会長。2016年4月から(一社)みちのくインバウンド推進協議会理事長。

司会 まずは自己紹介を。
熊谷 私は「みちのくインバウンド推進協議会」を2015年9月に設立した。復興庁のまとめによると、外国人の延べ宿泊者数は、16年には全国で約6407万人泊になるが、このうち東北6県には残念ながら約64万人泊、約1%しか来ていない。日本政府観光局の訪日外客統計によると、16年1年間で約2403万人が日本に来ているにもかかわらず、東北はインバウンドの恩恵をほとんど受けていない。また庄内の各企業は人口減少の影響を受け、将来展望を描けないという状況も見受けられた。そこで、なんとか東北に訪日外国人を連れてきたいということでやっている。
 外国人のツアーは4泊5日というのが標準。東北6県とはいっても、青森とか福島を入れると行程が長くなってしまう。ただ、青森のリンゴを食べたいとか、福島の三春の桜を見たいといった要望があれば、季節によってコースを変えていくことはあり得る。今は山形、宮城、秋田、岩手の4県を回っていくツアーを造成している。15〜16年の2年間で9組、二百数十人の外国人に来てもらい、東北を楽しんでもらった。
 ツアーの中では旧庄内藩主の酒井家にもご協力いただいている。ご当主夫妻があいさつに出るというと、やはりタイの人たちにはインパクトが強い。今も殿様の居るまちという印象を持ってもらった。ほかにも漁港でのバーベキューや民泊など、体験的なものをいろいろとメニューの中に入れている。
 18年にはタイから280人乗りのチャーター便が、仙台空港に乗り入れることが決まっている。規模が大きく非常に難しい対応になるので、各方面からもご協力いただいて、これから急ピッチで準備を進めていく。こんなツアーが連続するような仕掛けをぜひ作っていきたい。
大川 私は庄交コーポレーションで旅行事業部の担当をしている。当社としても、インバウンドには力を注ぎたい、特化してやっていきたいと考え、昨年からいろいろな動きを始めている。特に庄交価値創造研究所では、インバウンドの素材を磨き上げてツアーにつなげていこうと、庄内の観光、食文化、歴史などの有識者を理事とアドバイザーに迎えて模索を繰り返している。
 そうした中で分かるのは、庄内そのものが、日本国内でもまだまだ知られていない地域だということ。インバウンドはさておき、国内からいかに庄内に客を連れてくるかで、非常に苦心している。庄内の知名度不足もあるが、観光素材としては良いものがたくさんありながらも、それを上手に客に発信できていない。域外の方に山形県、庄内がどこにあるのか、いまだに伝わっていないのが実情で、まずは国内向けに充実させることがインバウンドにもつながっていく、と考え取り組んでいる。
 新潟県全域と庄内地域を対象とした19年度の新潟・庄内DCは、18年度のプレDCにも注目している。これにきちんと照準を合わせて、練習しながら本番に備えたいという心構えで態勢作りに取り組んでいる。
 旅行業は、人口が減っている地域では、外に連れて行く旅行には限界が見えているので、交流人口を拡大して域外から来てもらうことが重要になる。皆さんと一緒に、いろんな情報を共有しながら成功につなげていきたい。

維新150年に焦点当て企画展

中原 東北公益文科大学では2014年に開催された山形DCの時に、学生と共に「酒田おもてなし隊」を設立し、その後も継続して地域で観光の取り組みを行っている。ゼロから作り上げた団体だが、現在では35人の学生が参加している。
 酒田駅での観光案内や観光客送迎活動に加え、最近ではJR東日本が主催する「駅からハイキング」というウオーキングイベントを、「学生駅ハイ」という形で実施。学生が県内外観光客に地域を案内して回っている。16年はJR東日本の3支社5駅で8回行い、17年は舟形駅で9月に、余目駅で12月に実施し、毎回満員御礼となっている。
 17年には新たな取り組みとして、にかほ市、県立仁賀保高校、鳥海山・飛島ジオパーク協議会、酒田市と連携して、にかほエリアでジオハイキングを実施した。
 若者の地域外流出という課題に対して、地域の魅力を学ぶ郷土学習の必要性が求められることが多いが、観光客に庄内を伝えるという使命を持つ「おもてなし隊」の活動は、地域を学び、知り、地域愛を醸成する良い教育効果を学生に与えてくれている。
酒井 致道博物館の副館長を務めている。致道博物館には旧西田川郡役所、旧鶴岡警察署、田麦俣の旧渋谷家住宅と国の重要文化財になっている建築物が3棟あり、博物館はこれら3棟が核となって構成されている。
 「博物館」にはどちらかというと硬いイメージがあって、市民にとってもハードルが高い存在であることを日々実感している。やはり地域の成り立ちや事物、歴史を学習する施設として認識されており、気楽に入っていけるような雰囲気ではないのも確か。
 しかし、時間はかかるかもしれないが、私は博物館そのものの既成概念を変えて、若い人や親子連れがもっと入りやすい、日常のすぐ側にある博物館にしたいと常々思っている。
 現在、鶴岡市から旧庄内藩校致道館と大寶館の指定管理を受託し、両館の管理運営も担っており、私は大寶館の責任者となっている。今後は鶴岡の「まちなか観光」のさらなる活性化のためにも、博物館を含むこの3館が一体となった運用を目指したいと考えている。
 先日は県庄内総合支庁主催の「西郷隆盛と徳の交わりシンポジウム」でコーディネーターを務めたが、折しも18年は戊辰の役、明治維新から150年という節目の年でもある。その時代にスポットを当てた企画展・イベントを開催したいと考えている。戊辰の役150年を大きなテーマに3館が連携して、それぞれ違う切り口で企画展等を開催できれば面白いのではないか、と皆で話し合っている。
 旧鶴岡警察署庁舎は13年11月から取り組んできた修復工事が終わり、18年6月の公開に向けて準備を進めている。外壁の色が従来の白からウェッジウッドブルー(空色)に変わった、この建物を多くの方々に見ていただきたい。18年は勝負の年だと思うし、酒井家の歴史を含めて庄内全体をPRしていけば、きっと楽しいことができるのではないかと期待している。

クルーズ船受け入れの課題を精査

永田 酒田市の市政推進調整監をしている。酒田市の大きな課題としては人口減少があり、その減少のスピードをいろんな方策で緩めようとしている。
 重要なキーワードの一つは「交流」だと考えている。しかし、一つの課だけで対応、解決するのは難しいこともあり、2016年度に横断的に動く市長公室を設けた。交流に関して各課間を調整する横木くしを刺していくことで、全体的なスピードアップを図っている。その成果として、日本遺産の登録認定や東京五輪・パラリンピックホストタウンの認定登録に結びついた。
 17年に初めて受け入れたクルーズ船の寄港では、反省を踏まえて11の課題を抽出した。庁内各課から職員を出して課題解決の作業チームを作り、24回集まった。中間報告もまとまったので、18年度に向けて課題をしっかり解決し、より良い形で接客できるようにする。
 また、市民を巻き込んだ形でおもてなしをしたいと「おもてなし市民会議」を立ち上げた。会員数もだんだん増えている。市役所だけでなく市全体を挙げて観光客をもてなし、リピーターやファンをどんどん増やしていきたい。
小野 県庄内総合支庁長をしている。08〜09年度も庄内に赴任したが、庄内のポテンシャルは当時に比べると相当上がっている。鳥海山や出羽三山など素晴らしい観光資源を美しく残しつつ、情報発信の手法が多様化している。日本遺産の認定を取るなど、さまざまな情報発信ができつつある。
 これほどの観光資源を持ちながら、この程度しか客が来ていないのだから、伸び代は非常にある。必要なのは人材の育成と、人の流れを太くすること。人がどんどん来るような流れを作らないと、なかなか伸びないのではないか。総合支庁長として、交流のための基盤整備、陸路、鉄路、空路、海路の整備を進めつつ、人の流れを活性化するため、いろんな方策をやっていく。
 それと、こんなに美しく素晴らしい庄内から、若者がどんどん離れていってしまう。県内定着率が非常に低い。定着率を高めるためには、若者に庄内の素晴らしさを知ってもらい、郷土愛を育むというか、小さいころから家族、学校の先生、経営者も含め、皆で子供に言い聞かせる。そんなことも必要かなと、さまざま取り組んでいる。  今日は話題が非常に豊富なので、皆さんからいろんな示唆を頂けると期待している。

今度のDCは秋冬の魅力を発信

司会 プレDC、DC、さらに五輪と続くが、庄内をどう盛り上げていくか。
小野 新潟・庄内DCは組織体制を検討し、テーマやキャッチコピーをどうするか、さまざまな面で検討しているところだが、季節は秋から冬なので、その庄内をどう発信していくか。また、前回のDCと今度のDCは全く違うということで検証している。2009〜10年の時は鉄路が中心だった。とにかくJRの鉄道から客を引っ張ってくる。今のDCでは鉄路はもちろん、空路、バスやレンタカーとのタッグマッチをどうするか。
 先日、JR東日本の営業部責任者の方の講演があったが、インバウンドを含めて、その地域のすべての観光誘客、地域振興を考えていくという。以前より厚みが増して、皆でやるという体制。14年の山形DCの時も庄内で頑張ってもらい、県民総参加、全産業参加で取り組んでもらった。
 以前は山形でDCをやると、JR仙台支社が中心となって内陸中心でやったが、14年の際は仙台だけでなくJR新潟支社ががっちり手を握って全県で展開した。結果として、県内のどこに客が多く来たかというと庄内だった。入込数が22%増加した。庄内が最も伸びた。五重塔のライトアップなど、宮司さんたちがよくやってくれた。
 今度のDCは日本海側を中心に、冬の味覚、景観などさまざま準備して、かつ皆さんからいろいろな工夫をしてもらい、ちょっとしたものでも感度の高い人から見るとものすごく魅力的なものを集めている。第2回目の庄内DCになるので頑張っていきたい。これを機にインバウンドも頑張りたい。
 東京五輪・パラリンピックについても観光客が日本全体にたくさん入ってくる。食堂のメニューに英語表記があるような、山形県に入ってきた外国人観光客に違和感のない対応ができるような、さりげないサービスがあると印象が違う。こういったところが大切では。
 東京五輪マークの市松模様の柄も、山伏の着ている装束の柄と同じだというつながりも伝えていく。県では東京都と連携してどこの国を誘致ターゲットにしていくかを協議して進めている。15年度までの2年間はアセアンの中核、シンガポールを対象にしていた。17年度からはアメリカを五輪に向けたターゲット国にしている。どこの国の方にどういう誘致をしていくかを、みんなで練り合いながらやっていく必要がある。

「西郷どん」 秋に庄内藩登場か

永田 酒田市はニュージーランド(NZ)のホストタウン認定登録を受け、今は事前キャンプの誘致をしている。強化コーチなどに施設を見てもらい、高評価だった。NZのホストタウンは全国で人気なので、トライアスロンは酒田にと期待している。
 キャンプだけでなく、さまざまな交流でインバウンドに結び付けていきたい。2019年にかけてはこちらからも向こうに行って結びつきを深められれば。呼ぶだけでなく行くということも併せて考えていきたい。さまざまな姉妹都市との交流も今年やってきた。引き続き交流事業を続けて往来が活発になればいい。
酒井 プレDCの10月は、NHK大河ドラマ「西郷どん」の後半の方で、庄内藩が出るとしたらちょうどその時期あたりと考えられる。そこに向けて大規模な企画展やイベントを開催したい。併せて6月公開予定の旧鶴岡警察署庁舎のPRにも力を入れていきたい。「西郷どん」「旧鶴岡警察署庁舎」「酒井家の歴史」の三本柱で18年は盛り上げていきたいと考えている。そして鶴岡を訪れたら必ず立ち寄る場所、鶴岡とはこういうところだと明瞭に示せる博物館にしていきたい。
熊谷 やっぱり酒田と鶴岡の特徴は違う。鶴岡は武家文化、酒田は商人文化ということで、そこをはっきり対外的にアピールできる仕掛けが必要。「おしん」はタイの人たちにはいまだにインパクトがある。「いまさら」おしんではなく「いまだに」おしんというところも、うまく対外的に残していく必要があると思う。
 山居倉庫に来ても、おしんのアピールが無い。山居倉庫は酒田で唯一、年間60万人来ていると言われているので、そこにおしんの文化というか、船で最上川からきて酒田に丁稚奉公に来たというようなストーリーを、もう少し出してもいいんじゃないかと思う。この辺の人は非常に控えめなのであまり言わないが、政策的にはうまく取り込んだ方がいいのではないかと思う。
大川 鶴岡市も五輪のホストタウン登録を受けている。先日受け入れの推進委員会が立ち上がった。庄交グループとしては、二次交通や宿泊の面で積極的にかかわっていきたい。
 東京五輪・パラリンピックでは、本当に受け入れができるのかという問題がある。これから出てくる難問がかなり多いのかなと。そういった問題をどういうふうに解決していくのかがまだ見えていない。関係各位と連携しながら文化交流、合宿誘致が実現できたらと考える。

祭りをインバウンドに活用

熊谷 県の事業を使って、海外の旅行会社の社長を対象にした下見招待旅行「ファムトリップ」をしたときに、新庄まつりを入れるという条件があった。タイの旅行会社の人たちが祭りを見て、我々の期待以上に高評価だった。鶴岡の場合は酒井家の荘内大祭、酒田は港まつりがある。祭りにうまく連動させてインバウンドの人に来てもらうことも必要。
 それを地元の人にも受け入れてもらえるような土壌を作っていかないと。自分たちだけの祭りということで満足するのではなく、もっとインバウンドの人を受け入れ、可能であれば参加させられるような仕掛けがあればいいのかなと思う。期間が決まっているので合わせて来てもらうことには難しさもあるが、そういう形で地元の人と交流できるのは祭りが一番だと感じた。
小野 都会でないところに観光客を迎え入れるための材料としては、昔ながらの祭りなどが切り札になる。来てもらう際にきちんと宿を出せるかどうかが重要。
 東北三大祭りなどがあるが、他地域では祭りの時だけ宿泊料金が高いところもあるので、いかがなものかと。いつでもインバウンドの人に来てもらいたいとしたら、その時期はインバウンド枠を開けておくとか、そのくらいの覚悟を持ってやるべき。
熊谷 我々は祭りの時だけ値段を上げたりしていない。
小野 他地域ではあると聞いた。クルーズ船の誘致のときは、祭りの時期に来てくださいというのは非常に効果があると思う。
大川 旅行業者としては、提供してもらったものを販売するスタンスなので、祭りと連動した形で受け入れるというのはいい方向性だと思う。あとは、新しい祭りの創出も含め、来て楽しんでもらえるような明るい魅力があればいいかなと。
小野 天神祭りの化け物になるのが面白い。私も今年酒を注いで回った。化け物になって写真を撮ってツイッターに投稿するなど、今からはユーチューブ受けする祭りに、少しずつ切り替えられるのかもしれない。

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