郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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独自の事業で活発な施設も
庄内にコワーキングスペース増加中

 庄内にも起業家や事業者などが交流しながら働く「コワーキングスペース」が増えている。実際に起業した人に助言をもらえたり、独自に講座や催しを開催したり、医療や健康関係などの特定分野に特化していたり、と特徴を打ち出した施設は利用も活発で新しい事業も生み出している。一方で、起業家を育てるといった当初の目的が薄れ、お茶飲みサロンになっている施設もある、と指摘する関係者もいる。(金井由香、佐藤萌)


庄内のコワーキング施設

※コワーキングとは、個人事業者や起業家などが机や会議室などを共用しながら、各自の仕事を行う働き方。共用の場となるコワーキングスペースは全国に800カ所以上あり、多様な業種の人材が交流して、新しい事業が生まれることなどが期待されている。

3社が起業、30社目指す ライトハウス

1階のコワーキングスペース

1階のコワーキングスペース

 一般社団法人日本西海岸計画(酒田市新橋、池田友喜代表理事)が昨年9月同所に開設した起業家育成施設「ライトハウス」は、この1年間で延べ千人以上が利用し、ここで起業した①サイクリングガイドツアーなどの旅行業者YaH(株)②外国人観光客向け山形情報発信サイトを運営するザヒドゥンジャパン合同会社③移動型出張マッサージの(株)あんべいのと、同施設開設前からあった、有限責任事業組合ニーナコンサルティングと太陽光発電の普及事業を展開する(株)チェンジザワールドの計5社が、会員となっている。池田代表理事は「2020年までに30社起業することを目標にしている」と話す。
 日本西海岸計画は「庄内を起業家の街・日本版シリコンバレーにしたい」という起業家や会社役員らで結成した。ライトハウスは、庄内には無い分野での起業を目指す人を、先輩起業家が支援する場を作るために、インターネットによる資金調達で得た300万円で倉庫を改装して開いたもの。
 1階は起業を目指す人用のコワーキングスペース。約30席あり、プログラミングの勉強会や構想発表会、交流会などを毎月5回ほど開いている。2階は起業した人や法人が住所登録もできるシェアオフィス。仕切りの無いフロアに、6〜8席のテーブルが7卓あり、1席から貸し出している。


医療関係の講座で成果 みどりまち文庫

 (株)瀬尾医療連携事務所(瀬尾利加子代表取締役、資本金100万円)が運営する鶴岡市みどり町の「みどりまち文庫」では、医療関係者の会員が企画して、筋肉づくりと食事術やプレゼンテーション塾などの講座や催しを月10回は開いている。少人数で深く学び対話を重ねるために連続講座がほとんど。3年間に約20種類計167回開き、延べ1700人が参加した。
 2階建て民家の1階がコワーキングスペース、2階は事務所にも使える貸しスペース。会員は、自分の知識を社会に還元したいと考える医師や薬剤師、介護職、管理栄養士、セラピストなどが中心。コワーキングスペースよりも、講座で交流を深めて新たな催しや計画に発展している。
 16年2月に入会した薬剤師の栗原智広さんは同年11月、実際に食べて塩分の取り過ぎなどを実感する催し「健康ごはん」を始めた。薬局での食事指導に限界を感じた栗原さんが、産直マネージャーや食育インストラクター、管理栄養士らと企画した。今年7月からは、薬剤師や管理栄養士と気軽に雑談できる「健康カフェ」を月1回開いている。
 同文庫では他に、歯科医と音楽家などが協力して、高齢者のかむ力を維持する予防改善事業も進めている。飲食店申請ができるように、台所をインターネットの資金調達で整備した。
 瀬尾代表取締役は「催しが増えてきているので、もっと関わる会員を増やしていきたい」と話している。


既存事業者の支援に注力 サンロク

事業者を紹介し7件の成約をみたサンロク

事業者を紹介し7件の成約をみたサンロク

 酒田産業会館1階に4月に開設した「酒田市産業振興まちづくりセンター・サンロク」は、酒田市や酒田商工会議所などで作る同センター運営協議会(会長・丸山至酒田市長)が管理運営する。既存事業者の販路開拓や人手不足、商品開発などの悩みを解決するために最適な事業者を紹介する事業に力を注いでいる。
 これまでに、規格外の野菜を売りたがっていた同市の農家と、野菜の大きさを問わずに販売する東京都の企業との売買契約を成約させたり、人手不足の市内の農家に、市内の障害者施設を紹介して雇用に結びつけたりするなど、8月17日までに7件の事案を成立させ、36件が進行している。
 同市では、こうした紹介事業を21年未までに544件成立させ、それによって1億3872万円の売上を生むことを目標に掲げる。
 創業相談では、創業支援員が事業計画や資金調達、物件紹介などに当たり、4月〜8月17日に飲食店の開店5件を含む16件の創業があった。日本政策金融公庫と共催するセミナーなども6回開いた。
 サンロクの運営費と事業費計1億1700万円のうち3300万円は国の地方創生推進交付金、残りの8400万円は同市の一般財源や負担金で賄っている。


サンロク関係の融資8件 日本政策金融公庫

 日本政策金融公庫酒田支店が創業目的で融資した件数は15年33件、16年34件、17年32件。全国的に創業件数が伸び悩んでいるが、酒田支店では横ばいの状態。18年は7月までに20件と良いペースで増えている。
 同支店によると、例えば融資件数が30件あるとすると10〜15件は飲食店の開業。次いで美容・理容関係と、独立しやすい業種の創業が多い。平均年齢は40歳前後、女性の創業が増えている。若い人はインターネット通販など、初期投資の少ない事業が多い。
 石井高明融資課長は「今年の融資件数20件のうち、サンロク関係は8件。サンロクはこれをやりたいと決まっている人だけでなく、創業が気になるという人も入りやすいので、今後の可能性に期待できる」と話した。


利用者が伸び悩み エキイチ

 鶴岡市の第三セクター・公益財団法人庄内地域産業振興センター(小林貢理事長)が運営する「コワーキングスペース鶴岡エキイチ」は、同市マリカ西館2階の起業家育成施設の一角にある。3年間の期限付き貸しオフィスには今年度5社が入居している。
 2014年の産業競争力強化法制定に沿い、15年度から創業支援に力を入れてきた。エキイチの認知度を高めて、創業者や入居者を増やしていくつもりだが、延べ利用者数は15年度261人、16年度1041人、17年度988人と伸び悩み、創業相談件数も同87件、132件、90件と芳しくない。
 今年度は独立行政法人中小企業基盤整備機構の創業支援事業者補助金を活用して、起業の実務的講座を5講座、夜間起業相談会を8〜12月に毎月2回開く。また、マリカ東館3階の同振興センターで行っていた創業相談をエキイチで行う。
 小林時男事務局長は「ミニセミナーなどを企画して、エキイチの利用者を増やしていきたい」と話す。


学生の利用が7割占める アンダーバー

 酒田市が東北公益文科大学に運営を委託している、コワーキングスペース「アンダーバー」は、酒田市公益研修センターに15年10月に開設した。学生や社会人など多様な業種の人が交流して新しいビジネス考える機会にし、仕事場を変えて新たな発想を生み出す場と位置づけ、市では利用者数4800人を目標とする。
 会員数は延べ246人で、内訳は公益大生95人、公益大以外の学生9人、会社員55人、自営業者45人、公務員16人、創業者1人、教職員8人、その他17人。
 利用者数は16年度が延べ4374人で、内訳は学生55・6%、一般44・4%。17年度は3937人で学生58・7%、一般41・3%。18年度の4〜7月は1699人で学生73・7%、一般26・3%と学生の割合が年々増している。学生は試験勉強などに使うことが多い。
 日本政策金融公庫の創業セミナーなども毎週開き、毎年2人くらいの創業者を出している。
 委託費約800万円のうち400万円は国の地方創生推進交付金、残りの400万円は市が負担している。


高校生多く増席検討も 鶴岡Dada

テスト期間は勉強の場になるDada

テスト期間は勉強の場になるDada

 昨年10月に開館した「まちづくりスタジオ鶴岡Dada」のコワーキングスペースは、開設10カ月で延べ1万9298人が利用した。鶴岡銀座商店街振興組合の若手でつくる鶴岡Dada委員会(鈴木裕士委員長)が、社会人が商店街を訪れるきっかけにしようと設けたため、利用料は月500円と格安。高校生以下は無料なので、テスト期間は高校生で約30席が埋まってしまう時もあり、増席を検討している。
 施設は鶴岡市から無償で借りた。収入源は鶴岡市が設けたまちづくりセンターの賃貸料年240万円と、研修室などの賃貸料やテナント料、コワーキングスペースの利用料。専属職員はいないため、利用者が自由に書ける黒板や自由帳を置いて意見交換をしている。10月28日には1周年記念パーティーを開き、利用者が交流できるようにする。
 鈴木委員長は「仕事上の知人にここで出会い、本業とは別の話が弾んで、一緒にイベントを企画した人もいる。自由な交流から商店街が盛り上がる事例が生まれてくれれば」と期待する。


本来の目的を忘れずに

 庄内にコワーキングスペースが増える一方、庄内のある起業家は「コワーキングスペースは起業や新しいビジネスにつなげる目的があったはずだが、ただのお茶飲みサロンや勉強場所になっているところもある」と指摘。さらに「補助金を使って運営している場合、補助金が終わったら終わりというような形では将来につながらない」と話した。


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