郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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9月1日投開票 酒田市長選 市政の現状と課題[下]
課題解決の手法で両氏に違い
本紙独自 立候補予定者に聞く

 任期満了に伴う酒田市長選は25日の告示(9月1日投開票)が目前に迫り、現職で再選を目指す丸山至氏(65)と、元市長で衆議院議員を1期務めた阿部寿一氏(60)の現元2人による一騎打ちが確実な情勢となっている。市長選の立候補予定者と、市長選と同日程の同市議会議員補欠選挙(欠員2)の立候補予定者4人を対象に、本紙が独自に行ったアンケート調査の結果を掲載し、併せて最新の情勢を探った。掲載は五十音順、敬称略。

 丸山氏が進める現市政の継続を選ぶのか、再び阿部氏に市政を託すのか。今度の市長選ではこの点が最大の焦点となる。また阿部氏が立候補を決意した理由に、市財政の悪化や優先する事業の順位に対する疑問などを挙げていることから、こうした点を市民がどう判断するのかにも注目が集まる。

丸山陣営 積み重ねた実績を前面に

 丸山氏は7月27日に酒田市松原南で後援会事務所開きを行い、今月8日には同市のガーデンパレスみずほで総決起大会を開き、集まった支援者ら約700人に支持拡大を訴えた。公務を優先し、支援企業・団体へのあいさつ回りは旧盆明けから本格化させた。告示日は事務所で出陣式を行い、第一声も同所で行う予定。
 告示後に市内各所で開く個人演説会の場所と時間は20日時点で調整中。自民党県連と公明党県本部の推薦に加え、衆議院県3区選出で自民党の加藤鮎子衆議院議員、酒田市・飽海郡区選出で同党の県議3人、市議会議員では自民党系と公明党議員で構成する「公政会」(9人)全員、労組系の「市民の会」(6人)の一部から支援を受ける。
 2期目に向けた公約では、国内トップクラスの幼児教育・保育無償化水準の実現、(株)良品計画など民間の「稼ぐ力」を活用した公民連携によるにぎわい拠点づくり、日本海東北自動車道・国道47号新庄酒田道路の道路予算確保に向けた活動強化―など計9項目を掲げた。
 陣営の有力幹部は「1期目でこれだけ多くの成果を出した市長は、歴代の中でも珍しい。にぎわいづくりや交流、産業振興、人づくり、市民協働、安心生活などの分野で積み重ねてきた実績を訴えていく」と話す。
 丸山氏はこの4年間に▷鳥海山・飛島ジオパークの日本ジオパーク認定▷北前船寄港地として日本遺産に認定▷外国クルーズ船の酒田港寄港▷格安航空会社の庄内空港―成田国際空港便の開設▷友好都市・中国河北省唐山市京唐港と酒田港を結ぶ釜山経由コンテナ航路開設▷市産業振興まちづくりセンター「サンロク」の開設▷小中学校に教育支援員を60人配置▷市中町にぎわい健康プラザ開設―などを実現した。
 髙橋千代夫選対幹事長はこうした実績に加えて「酒田商工会議所を中心とする経済界の二重構造がほぼ解消されるなど、一枚岩ではなかった市内勢力の状況を一定程度修復してきた功績は大きい」と指摘する。
 丸山氏が市議会6月定例会で「2020年度の予算編成に向け38億円の財源不足が見込まれる」と答弁したことには「予算要求の段階では毎年度、財源の不足額は20〜40億円に上る。予算編成で精査し、優先順位をつけ、基金や有利な起債を活用して財源不足をゼロにしており、市財政が急速に悪化しているとの指摘は当たらない」と説明する。


阿部陣営 出馬理由の理解浸透が鍵

 阿部氏は今月5日に支援者ら約100人を集め、同市富士見町1丁目で後援会事務所開きを行った。23日には県選挙区選出の舟山康江、芳賀道也両参議院議員を弁士に迎え、市総合文化センターで総決起集会を開く。支援者へのあいさつ回りに加え、16日からは国道7号などの幹線沿いで早朝のつじ立ちも行っている。告示日の出陣式は事務所、第一声は国道7号を挟んだ同所向かい側で行う予定。
 告示後に市内各所で開く個人演説会の場所と時間は20日時点で調整中。国民民主党県連の推薦、連合山形と社民党県連の支持、共産党県委員会の自主的支援を受ける。
 舟山、芳賀両参議院議員、酒田市・飽海郡区選出の阿部ひとみ県議、佐藤藤彌前県議、市議会議員では阿部氏の市長選と衆議院議員選挙を支えてきた「志友会」(9人)全員、「市民の会」の一部、市議会議員補欠選挙に立候補を予定する労組系の新人1人から支援を受け、共産党酒田市議会議員団(2人)からも自主的支援を受ける。
 公約では、市財政の健全化、若者の地元定着率の向上、高齢者が安心して暮らせる地域社会の実現、一党一派に偏ることなく市民・地域の声に耳を傾ける市政の実現―などを掲げた。
 陣営の関係者は「立候補の表明が告示まで3週間余りとなる今月3日、と出遅れた感は拭えない。市長選に立候補することになった理由が、投開票日まで市民の間でどの程度まで理解されるかが、勝敗を大きく左右する」とみている。
 市民からは「市長を任期途中で辞職し、衆議院議員を経て2度落選しているが、国政復帰が難しいから市長に戻ろうとしているように見える」「市民の阿部市政に対する評価は良否が大きく分かれており、再び市政のかじ取り役を託すことには抵抗がある」といった声が聞かれる。
 特に評価が分かれているのは、庄内町と遊佐町を取り込めなかった、2005年11月の1市3町による市町村合併。合併前まで山形市に次ぐ県内2位の人口規模だった酒田市は、合併後、鶴岡市に抜かれて同3位となり、国の出先機関や企業の支店・営業所が鶴岡市に相当数移転した。
 後藤仁選対幹事長は「市民の会の支援が割れているため、7月の参議院議員選挙で芳賀氏を当選させた野党共闘の体制とは異なるが、勢いを受け継いでいきたい。告示後にも規模を拡大した個人演説会の開催を予定しており、市民党の立場で無党派層への浸透にも注力していく」と話した。


両氏、山形新幹線延伸を優先

 アンケートは15日を回答期限に、計11問の質問に答えてもらった。結果を見ると、最優先で取り組む政策や地域に対する現状認識、各種の課題を解決するための手法などで、両氏の考え方には違いがある。
 それが最も顕著に表れたのが「当選したら最優先で取り組む政策は何か」への回答。丸山氏は2期目の公約にも盛り込んだ「国の幼児教育・保育無償化措置を受けて、県内トップレベルの幼児教育・保育の経済負担軽減策の実現し勤労世代の支援を強化する」と回答。ほかに▷農林水産業や地元中小企業への経営支援▷交流人口拡大に向けた環境整備▷生活の豊かさを売りとする移住定住―を進めたいとの考えを示した。
 これに対し阿部氏は公約の一つに掲げた「急速に悪化していると思われる市財政の健全化」と回答した。さらに▷若者の地元定着の推進▷市内各地域が抱えている課題を一つ一つ解決すること▷戸別所得補償の廃止で厳しさを増す地域農業の振興―を挙げた。
 「酒田市の現状をどのように認識しているか」を問うと、丸山氏は「町を元気づける取り組みが実りつつある」と、これまでの成果を強調。有効求人倍率や製造品出荷額、一人当たり市民所得は堅調な一方、その他の状況は厳しく、人口減少に歯止めがかからずその影響が心配される、とした。
 阿部氏は▷若者の地元離れが進んでいる▷地域と生活者に対する施策が薄い▷市民生活を支える市財政が悪化しているように見える―の3点を挙げ、現市政の取り組みを批判した。
 多くの市民が関心を寄せる庄内の鉄道高速化では「①フル規格の羽越新幹線整備②現行の羽越本線の高速化③山形新幹線の庄内延伸―のどれを優先して整備した方が良いと思うか」尋ねた。
 丸山氏は昨年以降、山形新幹線の庄内延伸に消極的な発言を繰り返してきたが、「山形新幹線庄内延伸が優先」と答えた。次いで①②の順とした。阿部氏も「山形新幹線の庄内延伸を優先すべき」と答えた。①も国に要望を続けるとした。
 「酒田商業高校の跡地をどのように活用すべきか」では、丸山氏は「山居倉庫の国史跡指定後に、市街地での集客拠点となる『まちの駅』としての整備を目指す」と回答。阿部氏は「市民皆様の意見を丁寧に聞きながら有効活用するべき」と答えた。整備内容では、酒田の歴史や文化を紹介する施設、冬季を中心とした屋内運動施設などは検討に値する、との考えを示した。


本紙独自 酒田市長選立候補予定者アンケート調査の回答

阿 部 寿 一(60)

無所属・元職
国民民主党県連推薦、連合山形支持、社民党県連支持
元衆議院議員
東京大学法学部卒、亀ケ崎3丁目

丸 山   至(65)

無所属・現職
自民党県連推薦、公明党県本部推薦
酒田市長
山形大学人文学部卒、光ケ丘1丁目

[1]当選したら最優先で取り組む政策は何ですか。
 急速に悪化していると思われる市財政の健全化。若者の地元定着の促進。市内各地域が抱えている課題を一つ一つ解決していくこと。戸別所得補償の廃止で厳しさを増す地域農業の振興。  国の幼児教育・保育無償化措置を受けて、県内トップレベルの幼児教育・保育の経済負担軽減策を実現し勤労世代の支援を強化するほか、農林水産業や地元中小企業への経営支援、交流人口拡大に向けた環境整備、生活の豊かさを売りとする移住定住を進める。
[2]酒田市の現状をどのように認識していますか。
 若者の地元離れが進んでいる、地域と生活者に対する施策が薄い、市民生活を支える市財政が悪化しているように見える。  町を元気づける取り組みが実りつつある中、人口減少は歯止めがかからずその影響が心配される。有効求人倍率や製造品出荷額、一人当たり市民所得は堅調なもののその他の状況は厳しい。交流人口増と地域産業の活性化を図り域内経済循環につなげたい。
[3]酒田市の財政は厳しさを増していますが、財政健全化に向けた施策はありますか。
 不要・不急の事業は中止・縮小すること、施設の整備については、維持管理経費のことを常に念頭に置くこと。  令和2年度で合併特例である地方交付税の加算措置が終わることから、産業振興による税収増、事業財源での国の交付金活用、成果主義に基づく既存事業の見直し、民間の資金や運営ノウハウを活用する「公民連携」の推進、経常コストの低減努力の徹底を図る。
[4]庄内の鉄道高速化では、①フル規格の羽越新幹線整備②現行の羽越本線の高速化③山形新幹線の庄内延伸―のうちどれを優先して整備した方が良いと思いますか。
 地域の発展を考えれば、できる限り早期に鉄道の高速化を図るべきであり、最も現実的で、故本間正巳前市長の公約でもあった③山形新幹線の庄内延伸を優先すべき。また、県内の一体化を図る上でも重要。もちろん、整備新幹線についても国に要望を続ける。  整備完了までの所要事業費や所要時間、県土整備の均衡、県民文化の一体感の醸成、県内市町村全体への経済波及効果から総合的に判断すると「山形新幹線庄内延伸」が優先。次に「フル規格羽越新幹線整備」、「現行の羽越本線の高速化」の順番。
[5]庄内空港の利用拡大策として、どのようなことを優先した方が良いと思いますか。
 庄内空港利用推進協議会を中心に、官民一体となって地道な利用拡大運動を行うこと、観光振興などにより庄内を訪れる人々を増やしていくこと。  庄内空港ビルの機能拡大に向けた建物や駐車場環境の充実を図ると共に、早期に滑走路2,500メートル化の実現を図る必要がある。また、観光や文化交流、産業交流の拡大によって多くの人が国内外と庄内地域とを行き来する地域環境を整えることが急務。
[6]高速道路網の整備が遅れている要因、整備を進める方策として考えていることはありますか。
 整備が遅れている要因としては、基本計画路線からの格上げが決定的に遅れたこと。整備を進める方策としては、既に整備が進んでいる地域の皆様と共に、一本の線につなぐための運動を強力に展開すること。  用地取得の遅れと国の事業予算確保のパワー不足が遅れの要因。政府与党との強い信頼関係を基本に、官民一体、地域一丸となった粘り強い中央官庁への要望活動を通して、用地取得作業の迅速化と事業予算の確保に向けた運動を強める必要がある。
[7]酒田港の振興に向け考えていることはありますか。
 県内の道路網の整備を進めながら、山形県内陸地方・宮城県などに積極的にポートセールス活動を行うこと。酒田港の利用により大きなメリットを得た成功例を県内企業に積極的に紹介すること。  ①日本海側の拠点港湾につながる国内RORO船貨物航路の新規開設、とりわけ、福岡〜敦賀〜苫小牧を結ぶRORO船航路への酒田港の組み入れ。②中国及びロシアとの新たな国際コンテナ航路の実現。③客船着岸時の旅客上屋の整備などを進める。
[8]酒田商業高校の跡地はどのように活用すべきだと思いますか。
 中心市街地に存在する貴重な遊休地であり、観光物産館である山居倉庫の近接でもあるので、市民皆様の意見を丁寧に聞きながら有効活用をするべき。例えば、酒田の歴史や文化を紹介する施設、冬季を中心とした屋内運動施設などは検討に値すると思う。  山居倉庫の国史跡指定後に、市街地での集客拠点となる「まちの駅」としての整備を目指す。整備内容は、駐車場以外の機能は今後まとめる予定。整備手法としては、民間資金や運営ノウハウを取り込んだいわゆる「公民連携」による事業成立を検討する。
[9]国内外のクルーズ船の酒田港寄港が増えていますが、乗客・乗務員などにより多くのお金を酒田に落としてもらうための方策はありますか。
 乗客・乗務員に対するアンケート調査、先進事例の調査・検討などを行った上で、観光協会、商店街の協力を得ながら、魅力的な観光メニューをつくり、積極的に紹介していくこと。  酒田駅前エリア、日和山公園周辺、中町モール周辺、山居倉庫周辺、飯森山公園周辺、ジオパークエリア等の魅力形成と商業機能の充実を図るとともに、タクシー配備の充実など各エリアへの域内移動手段の整備によって集客機能を強化する必要がある。
[10]高校生をはじめとする若者の県外流出を防ぎ、地元定着を図るための施策はありますか。
 高校の協力をお願いしながら、地元で働くことの素晴らしさ、地元企業の魅力を生徒に積極的にPRすること、市民の皆様にも同様のPRを行うことで、UIJターンを積極的に促すこと。  小中学校、高校、大学、専門学校において、児童生徒、学生、教員、保護者を巻き込んでの地元企業の情報提供や職場体験、地元定着に力点を置いた教育プログラムとしてのキャリア教育の徹底、奨学金返還支援制度等の地元定着誘導策を充実させていきたい。
[11]地元企業や誘致企業の発展のため促進する政策はありますか。
 異業種交流、地元企業同士の情報交換の場を拡大すること、起業・新分野への進出について一定の支援を行うこと、ふるさと会の活用などによって、ビジネス機会の拡大をアシストすること。  酒田市産業振興まちづくりセンター「サンロク」(2018年4月設立)を通じた各種助成制度等の紹介やマーケティング戦略に係る情報提供、人材養成研修、企業間マッチングや、酒田市小規模企業振興条例に基づく小規模事業者持続化特別支援事業等での支援。

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