総合建設業の戸田建設(株)(東京都中央区、資本金230億円、大谷清介代表取締役社長)は5日、酒田市と市内全域を対象とした地域創生に関する包括連携協定を締結し、地域活性化策を展開する拠点施設として、2020年3月に営業を終えた同市飯森山3丁目の旧かんぽの宿酒田の土地・建物を購入した、と明らかにした。
池田邦雄・市地域創生部長などによると、同社は今月初旬、かんぽの宿酒田を所有している市内の民間事業者と、土地・建物の購入に向け売買契約を結んだ。今後は、現行の建物をリゾートホテルのような施設に改修・再生し、2年後の27年ごろの開業を目指す。購入額、総事業費は非公開。
旧かんぽの宿酒田は1996年1月、酒田簡易保険総合レクレーションセンター(後にかんぽの郷酒田)として開業した。敷地面積は約7万3260平方メートル。建物は鉄筋コンクリート造り6階建てで延べ床面積は約6660平方メートル。温泉入浴設備を備えた宿泊施設で、客室は39室。テニスやゲートボール、フットサルなどができるドームを備える。
2020年に閉館したかんぽの宿酒田
酒田市との包括連携協定の締結も、SECCを進める取り組みの一つ。酒田市全体で1〜3次産業の幅広い分野での連携を想定し、市の有休施設を活用した1次産業、観光施設を活用した3次産業、物流も含めた6次産業化を検討する。
包括連携協定の内容は①地域資源や観光資源の活用②公共施設や有休施設などを活用した事業検討③関係人口、交流人口も含めた地域の人口増加への貢献④事業参画に同意する地域企業との協力による事業実施と新規事業創出⑤市民、市内企業と周辺自治体との親和性、共生に貢献できる事業の創出⑥その他、必要と考える事項など―の6項目。
想定される事業では、データセンターや物流、倉庫、加工工場の誘致・活用、水産物・農産物の6次産業化などを挙げている。同社が長崎県五島市沖で26年の運用開始を目指す浮体式洋上風力発電を、飛島周辺で展開する考えもあるという。
酒田市出身で今年度から市産業振興政策参与を務める佐藤文夫氏が、同社の監査役だったことに加え、同社の植草弘執行役員副社長が今年3月に同市を訪れ、「地域資源が豊富にあり、酒田であればSECC構想を実現できると考えたようだった」(池田部長)ことも締結につながった。
池田部長は「構想を実現できる場として酒田の資源に興味を持っていただけたのはありがたい。ただ、あくまで民間による開発。地元企業と連携し、新しい取り組みが生まれてくることを期待している」と話した。