郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
Community News Web Site
郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
Community News Web Site
全文掲載

山形新幹線庄内延伸
吉村県知事「地域でも議論を盛んに」
県議会予算特別委で前向きの見解

 吉村美栄子山形県知事は、6月23日の県議会6月定例会予算特別委員会で山形新幹線の庄内延伸への考えを問われ、「庄内から首都圏につながる鉄道ネットワークのさらなる機能強化が必要。取り巻く状況が変化してきており、今後、どのような形が望ましいのか、地域でも議論を盛んにしてほしい」と述べた。吉村県知事は本紙が先に行った単独インタビューの中で「山形新幹線の庄内延伸は、大いにあると思っている。地元から声を上げてもらえると、県も動きやすい」との考を示していたが、県議会での答弁は、こうした見解を公式に表明した形。酒田市民からは「庄内延伸の実現に向けた整備推進運動を早急に展開するべき」といった声が上がっている。(編集主幹・菅原宏之)

取り巻く状況が変わった

 県議会6月定例会で山形新幹線の庄内延伸問題を取り上げたのは、酒田市・飽海郡区選出の梶原宗明県議会議員(自民党)。梶原県議は、本紙が5月14日に行った吉村県知事への単独インタビューの内容や、庄内延伸に向けたこれまでの整備推進運動に触れた上で「(庄内、最上、村山、置賜の4地域からなる)山形県全体を結ぶことで県内移動の短縮や利便性向上はもとより、県民の一体感が醸成され、さらなる県勢発展が期待される」と指摘した。

写真
答弁する吉村県知事

 そして「吉村県知事が庄内のコミュニティしんぶんに語った山形新幹線の庄内延伸に対する前向きな発言は、庄内でも大きな話題と期待になっている。子どもたちへの大きなメッセージになったとも考えるが、改めて吉村県知事の考えを伺いたい」と見解を求めた。
 吉村県知事は、01年度から05年度にかけて新潟駅での同一ホーム対面乗り換えなどによる羽越本線の高速化と、山形新幹線庄内延伸の調査を行い、対首都圏、対隣県、対県内の交流拡大の視点から、羽越本線の高速化が優位との結論を得た、と振り返った。
 そして14年度までに加速性能の高い車両が導入され、18年度には新潟駅での同一ホーム対面乗り換えが実現した、と説明。続いて23年度には上越新幹線の最高速度の向上と新潟駅での乗り換え時間も調整された結果、酒田―東京間の最速の所要時間は3時間45分に短縮されている、と解説した。
 その上で「こうした取り組みを進めてきたが、各地域で新幹線の整備が進み、移動時間の短縮が進む中、庄内から首都圏につながる鉄道ネットワークのさらなる機能強化が必要と考えている」と述べた。

整備の効果はさまざま

 吉村県知事はさらに、庄内延伸が実現すれば▼庄内―東京間が乗り換え無しで結ばれる▼内陸と庄内が新幹線でつながることで、庄内の県内外との人的交流が拡大する▼県内各地域間の連携が活発化し、観光や産業、経済、暮らし、生活、都市機能、防災の各分野で県全体の発展が期待できる▼県内陸部から酒田経由による秋田県との交流拡大も図りやすくなる▼米沢トンネル(仮称)の整備効果をより一層、庄内にも及ぼすことが可能になる―などといった効果が考えられる、と指摘した。
 そして本紙の単独インタビューに言及し「私からは『実現すれば、内陸地域と庄内地域が道路だけでなく、新幹線でもつながることになる。山形新幹線を庄内地域に延伸することは、大いにあると思っている。地元から声を上げてもらえると、県も動きやすい』と答えたところである」と述べた。
 今後について吉村県知事は「これまでさまざまな検討の下、(庄内の鉄道機能強化の)取り組みを進めてきたが、取り巻く状況が変化してきており、今後どのような形が望ましいのか、地域でも議論を盛んにしてほしい」との考えを示した。
 その上で「県としても、こうした議論を踏まえながら、庄内地域を含めた県内鉄道の機能強化について検討していきたいと考えている」と答弁した。
 これを受け梶原県議は「子どもたちにとっても、内陸と庄内が新幹線でつながることは大きなこと。こうした観点からも、前向きに対応していただくことをお願いしたい」と強く求めた。

早急に推進運動の展開を

 山形新幹線の庄内延伸問題を巡っては、酒田市の矢口明子市長が5月30日の定例記者会見で本紙の質問に答え「県知事からは庄内延伸だけでなく、庄内地域で進めているさまざまな取り組みに対して、非常に前向きな発言があった。それを受け、我々がどのような運動、活動をしていけるのか、これから改めて考えていきたい」などと語った。
 これを踏まえ酒田市民の間からは「庄内延伸の実現に向けた整備推進運動は経済界が中心となり、行政がそれを支える官民一体の形で進めてほしい」「多くの同志がいることも大事なことから、新たな推進組織をつくることも必要になってくる」などの意見が出ていた。
 このうち推進組織については、酒田、庄内、遊佐、戸沢の1市2町1村の首長と議会議長を会員に03年7月に設立した「陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会」(会長・酒田市長)が中心となって、整備推進運動を進めていたが、21年9月に組織を解散した経緯がある。
 県内の政治事情に精通している酒田市の70歳代のある政党関係者は「新たな推進組織には、旧協議会のメンバーだった酒田、庄内、遊佐、戸沢に加え、新庄市にも入ってもらうべきだろう。山科朝則新庄市長は庄内延伸について理解があり、吉村県知事とも(政治的な立ち位置が)近いといわれている」と話す。
 同市の60歳代のある会社幹部は「庄内延伸に対する吉村県知事の前向きな発言は、地元にとって実現に向けた最後の機会になるのではないか。県知事が投げたボールを酒田市が受け取っている状況で、県知事の意向に応えるためにも、早急に整備推進運動を展開するべき」と提言した。

トップへ戻る