郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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ふるさと納税 2023年度4月~2月
3市町では寄付額過去最高
庄内米とメロンが人気

 庄内5市町の2023年度2月末までのふるさと納税の状況を聞いた。酒田、鶴岡両市と遊佐町は寄付額が前年度同期を上回り過去最高になったが、庄内町と三川町では下回った。昨年10月に制度が厳格化されたことによる寄付額の値上げや、そのための9月の駆け込み需要など、増減にはさまざまな要因がある。返礼品は庄内米がダントツに多く、特産のメロンも人気が高かった。これまでのようにPRに経費をかけづらくなる中でどう選んでもらうか、さらなる工夫が必要になっている。

 酒田市    寄付額41億円に増

 酒田市の2023年4月~24年2月の寄付件数は18万779件で、前年度同期の15万8163件から2万2616件14・3%増、寄付額は41億2138万3千円で同33億2274万3750円から7億9863万9250円24・0%増と、それぞれ過去最高となった。寄付額は年々増加をたどっている。
 同市交流観光課ふるさと納税係によると、昨年10月にふるさと納税の制度改正があり、9月に駆け込み需要があったことが影響した。その報道でふるさと納税を知り、初めて利用した人も増えたと推察している。
 10月の制度改正では、寄付額に対して返礼品調達費用を3割にすることに加え、これまで経費として計上しなくてもよかった領収書や寄付金証明書などの発行・郵送費用なども含めて、経費を寄付額の5割以下に抑えることを厳格化した。そのため10月以降は同じ返礼品でも寄付額が上がったり、同じ寄付額でも返礼品の量を減らしたりと見直しをかける自治体も相次いだ。
 酒田市では寄付額の値上げをしなくても、経費を5割以下に収めることができた。しかし、各ポータルサイトや広告会社などからさまざまな提案があるが、PRにはお金がかけられなくなった。
 返礼品の中で申し込みが多かったのは米で、寄付額の多い順のトップ5を独占した。1位は前年と同じで、寄付額3万5千円の「無洗米はえぬき定期便5キロ×6カ月」で9731件約3億4千万円。2位は同8万5千円の「つや姫定期便5キロ×12カ月」で2251件約1億9千万円。3位は同1万8千円の「つや姫15キロ」で7482件約1億3千万円。寄付額16万円の「つや姫定期便10キロ×12カ月」、同9万円の「無洗米つや姫定期便5キロ×12カ月」と続いた。
 毎月定期的に米が届く「定期便」には早くから取り組んできた。スーパー等で買っても運ぶのが大変な米の買い方として、ふるさと納税の返礼品で受け取る手法が定着した。
 寄付額全体を見ても米が半分以上を占め、米以外ではメロンの人気が高く品切れになった。
 同市の返礼品の登録数は3月18日現在、約1100件ある。同係では返礼品はどんどん増やしたいと考えているが、申し込みのない返礼品は供給している事業者でやめる場合もあり、微増にとどまっている。返礼品として取り扱うために同係の職員が事業者と発送時期や確保できる数量などを念入りに打ち合わせする。八つのポータルサイトを利用しているが、生産者のこだわりなどをサイトで紹介するために話を聞き、サイトのページも基本的には職員が作る。
 同係では「応援したいと思ってもらえるようなサイトのページを作り、寄付者対応も丁寧にして今までやってきたことを続けていくしかない。返礼品は無いものねだりをしても仕方ないので米を大事にしていく。地域にある素材を使った加工品も増やしていきたい。現地に来てもらうなど、直接、寄付者とつながる機会も作りたい」と話した。

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酒田市の返礼品はメロンも人気


 鶴岡市    4億6千万円増え過去最高

 鶴岡市総務課によると、同市の23年4月~24年2月の寄付額は22億1600万円で、前年度の17億6000万円から4億5600万円25・9%増と過去最高を更新した。
 過去最高となった要因には▼ふるさと納税事業が10月に改正となり、多くの自治体が返礼品を値上げする中で、鶴岡市は配送料などの経費を見直してほとんどの品で価格を据え置いた▼ポータルサイトの数を7件増の19件に増やした▼農家や加工品業者を対象とした相談会を月1回開き、23年度は参画事業者数300件、返礼品数約1830件と、前年度比で事業者数20件増、返礼品数480件増になった▼納税件数が増える年末前に十分な品数を確保した―を挙げる。
 さらにコロナ禍の収束で旅行需要が増えることを見込み、市内17のホテルや旅館で使える共通宿泊券を新たに作った。旅行・宿泊系の寄付は前年度比約2倍の5000万円に増えた。
 返礼品で申し込みが多かったのは「アンデスメロン3~5玉」が6800件で8700万円と圧倒的に多く、次いで「お楽しみメロン3玉セット」が1700件2000万円、「つや姫パックライス180グラム24パック」が1600件1200万円だった。
 1、2位はメロンだったが、総数では米関連が5割超を占めて最も多い。メロンは8%ほどでだだちゃ豆も5・5%と人気がある。
 寄付金の使い道は①暮らしと防災②福祉と医療③学びと交流④農林水産業⑤商工と観光⑥社会の基盤⑦地域の振興⑧市長に一任―があるが、最初の選択肢が⑧になっているためか⑧を選ぶ人がほとんどとなっている。
 新年度予算ではふるさと納税の寄付額を23億5000万円と見込んでいるが、市は返礼品の値上げをほとんどのポータルサイトで4月1日から行う。
 同課の五十嵐佳祐専門員は「制度改正で対応に苦慮したが過去最高を大きく上回ることになり、寄付をいただいた方々に感謝を申し上げたい。値上げで寄付が落ちないように取り組みを進めたい」と話した。


 遊佐町    13億円で過去最高を更新

 遊佐町産業課によると、同町の23年4月~24年2月の寄付額は12億5000万円で過去最高となった。前年度の8億7000万円から3億8000万円43・7%増えている。
 ふるさと納税の制度改正で9月に駆け込み納税が増え、12月と合わせて大きな波が2回あったことが寄付額を押し上げた。
 申込みが最も多かったのは「はえぬき定期便5キロ6カ月連続(2~7月)」の1003件で、次いで「無洗米つや姫5キロ6カ月連続(10~3月)」964件、「無洗米5銘柄食べ比べ各5キロ5カ月連続(1~5月」951件の順。返礼品の1~9位が米で、米は全体の9割を占める。


 庄内町    寄付額の値上げも響く

 庄内町の23年4月〜24年2月の寄付件数は2万4470件で前年同期の3万1852件から7382件23・2%減、寄付額は5億1934万7500円で同6億6564万円から1億4629万2500円22・0%減と、それぞれ大きく下回った。9月の駆け込み需要はあったものの10月から急減し、期待した年末の12月も伸び悩んだ。
 経費を寄付額の5割以下に抑える制度改正に従うため、広告などの支出を減らして対応したが、寄付額の設定も見直さざるを得なかった。そのため10月以降、ほとんどの返礼品で中身は同じでも寄付額が高くなったことが、寄付件数と寄付額が減った要因。
 同町商工観光課ふるさと納税係では「経費が掛からないSNSで情報発信したが弱かった。リピーターに対策が打てればよかった」と話し、これからは今以上に庄内町の祭りやイベント、米のブランド化事業など頑張っている姿を発信して、庄内町の魅力をアピールしていく考え。
 申し込みが多かった返礼品を寄付額の多い順にみるとパックご飯が上位を占めトップ5は米関連だった。1位は寄付額1万6千円の「山形県産つや姫ごはん無菌パック36個」で7593件、2位は同1万2千円の「山形県産つや姫ごはん無菌パック24個」で1561件、3位は同5千円の「庄内産でわのもちを使用した杵つき餅400グラム×3」で1307件だった。
 精米の中でもつや姫の無洗米は人気があるが、期待通りにはいかなかった。米の定期便も前年には及ばなかった。人気6位には庄内SPF豚肩ロースブロック4キロ(2キロ×2)が入った。寄付者には好評でリピーターもいた。
 同係では、同町返礼品専用のオリジナルパッケージの米をはじめ、米と豚肉、酒を返礼品の基本に置いて、さらに力を入れていく方針。半面、庄内の自治体ではどこも米が最大の返礼品で、庄内米で寄付者を取り合っている状況にある。その中で埋もれずに庄内町をPRすることが必要となっている。
 同係では「広告費などお金を使わずに寄付を集めるのが難しくなっているが、町財政の財源の一つともなっているのでしっかりと寄付を集めたい」と話した。


 三川町    寄付件数、金額とも減少

 三川町の23年4月~24年2月の寄付件数は1万5563件で、前年度同期より2804件15・3%減った。寄付額も3億3718万9千円と、同827万4100円2・4%減った。
 同町産業振興課では、同町が利用していなかった楽天や、さとふる、ふるなびなどのポータルサイトの利用割合が増えたことが要因とみている。23年10月から楽天も使い始めた。
 寄付額は1件あたり2万2666円で、前年度同期より2857円15・2%増えた。寄付額の42・6%が1万~2万円未満、21・3%が10万~50万円未満、13・3%が2万~3万円未満だった。
 人気の返礼品は、寄付額2万円の「つや姫パックライス24個セット2箱」で3931件と全体の22・2%を占めた。2位は同1万1900円の「つや姫パックライス24個セット1箱」で3544件と同20・0%。3位は同1万2900円の「庄内産冷凍ブルーベリーバラ詰め約2キロ」の604件で同3・4%。
 同町では返礼品の購入費や人件費を除いた寄付金を全て、ふるさと基金に積み立てている。23年度はいろり火の里推進事業費2500万円、インフラ整備関連事業費2470万円、農業振興関連事業費960万円などに支出した。
 同町では、使用するポータルサイトを増やすことや、経費を抑えて返礼品設定金額を下げることなどを検討している。

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