郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田市25年度予算案
八幡体育館改築に5億円超
一部市民が市の判断を批判

 酒田市は13日に2025年度当初予算案を市議会に内示したが、継続事業で八幡体育館(同市観音寺)改築事業費約5億2997万円を盛り込んだことに、一部市民の間から「大雨災害からの復旧・復興が最優先の課題。市八幡体育館の建て替えはコンパクトシティの考え方に逆行するもの」「市幹部は今回の政策判断に対する結果責任を負うべき」といった批判の声が上がっている。一方、市が旧松山中学校体育館(同市字総光寺沢)を改修して設ける方針だった仮設屋内スケート場の整備の中止に伴い、24年度に予算化していた設計委託費1100万円のうち約371万円を設計委託業務の請負業者に支払っていることが分かった。(編集主幹・菅原宏之)

建て替え工事に外構工事も

 同市では、市八幡体育館を市国体記念体育館(同市飯森山)とともに市の主要体育館として整備する方針を示している。これに基づき市は、耐震改修工事が必要とされた市八幡体育館を23~26年度に建て替える。
 これを踏まえ市は25年度一般会計当初予算案に、八幡体育館改築事業費5億2996万8千円を盛り込んだ。25年度は24年度と2カ年の予定で行う建て替え工事を継続し、26年度まで2カ年の予定で行う外構工事(修道館の解体工事を含む)にも着手する。
 前田茂男・市総務部長によると、市は今月6日に市八幡体育館の建て替え工事に向け、条件付き一般競争入札総合評価落札方式で、建築工事を市内の林・菅原特定建設工事共同企業体(代表者・林浩一郎林建設工業(株)代表取締役社長)と税込み6億4130万円で仮契約を結んだ。工期は、21日〜3月19日の日程で開かれる3月定例市議会の議決日から26年3月25日まで。
 24年度に予定されていた現体育館の解体工事は、昨年6月18日に市内の(株)菅原工務所(菅原脩太代表取締役社長)と税込み1億4039万3千円で請負契約を結んだ。
 当初の工期は請負契約日から今年3月14日までだったが、昨年7月の大雨災害の影響を踏まえて工期を変更した。変更後の工期は請負契約日から今年6月30日まで。外構工事の請負業者は、今後の入札を経て決める予定という。
 総事業費は予算ベースで計8億2915万8千円。

仮設スケート場で371万円払う

 山形県が整備を検討している県営屋内スケート施設の庄内空港(同市浜中)周辺への誘致を前提に、市が旧松山中体育館を改修して設ける方針だった仮設屋内スケート場を巡っては、矢口明子市長が昨年11月5日の定例記者会見で整備を中止する、と発表した。
 その理由に▼県屋内スケート施設整備検討会議第2回会合で「公共交通機関でアクセスできる村山地域の都市部に整備する」との方向性が示された▼県と山形市が県営屋内スケート施設・武道館・体育館の3スポーツ施設の整備に向けた検討を共同で進める、と発表した―ことなどを挙げた。
 仮設屋内スケート場の整備は、市が24年度から進めていた。これに基づき市は同校体育館の改修に向けた設計委託費1100万円と、駐車場を整備するための校舎解体費2億3200万円(2カ年で計5億8千万円)を予算化した。
 このうち設計委託業務は昨年7月の大雨災害を受けて作業を停止したが、2割程度まで進んでいたことから、整備の中止に伴い損失が発生する可能性を指摘する見方が広がっていた。
 樋渡隆・市スポーツ振興課長は取材に対し、市では松山体育館(同市字内町)の老朽化を見据え、将来的に旧松山中体育館に機能を移転する方針、と説明した。
 その上で「設計委託費のうち371万8千円を使って旧松山中体育館の現況調査と現況図を作成したが、これは将来の資料として活用できる。残りの設計委託費728万2千円は、昨年の12月定例市議会で減額補正している」と説明した。

コンパクトシティに逆行

 市の政策判断に対し、一部市民の間からは批判の声が上がっている。
 行政に詳しい70歳代のある政党関係者は「大雨災害からの復旧・復興が、酒田市にとって最優先の課題。そもそも箱物を整備している場合ではなく、急ぐ必要もない。コンパクトシティの考え方にも逆行する。市は昨年11月に仮設屋内スケート場の整備を中止にしたが、市八幡体育館の建て替えも、政策判断で凍結するべき」と厳しく批判する。
 県内の政治情勢に通じた70歳代の建設関連会社の経営者は「市の主要体育館を整備するのであれば、人口の多い旧市内に建てるべきで、わざわざ人口の少ないところに造るという判断は理解できない。市八幡体育館を建て替えるのであれば、年間の利用者数や利用率などに目標値を設け、それを下回った場合は市の幹部が結果責任を負うべきではないか」と指摘した。
 市民の間からはほかに― ▼大雨災害を踏まえた防災対策の強化や産業振興の推進など、市が注力しなければならない課題は多い。市八幡体育館の建て替えが、財政難の酒田市に必要な事業なのかどうか疑問。税金を使う優先順位が違う。
▼旧市内から市八幡体育館に通うとなると、多くの市民の利便性は低下する。市全体のことを考えた施策とは思えず、市民からは理解されないのではないのか―といった声が聞かれた。

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