経営悪化で2021年8月に破産手続きが始まった、酒田市の百貨店・マリーン5清水屋を運営していた(株)マリーン5清水屋の第13回債権者集会が9日、山形地裁酒田支部で開かれた。破産管財人の加藤栄弁護士は、破産者所有不動産(旧清水屋の土地と建物)の売買交渉に関し、今年3月3日にあった第12回債権者集会以降、特に目立った進展は無かったものの、同市と5月中旬に、破産者所有不動産と破産手続きの関係について書面と面談で意見交換を行った、と報告した。
加藤弁護士と、同じく破産管財人を務める藤井正寿弁護士が、非公開で行った債権者集会の後に説明した。
加藤、藤井両管財人や、債権者に配布した報告書によると、大型商業施設「いろは蔵パーク」の開業前夜祭が3月26日にあり、祝辞の中で矢口明子酒田市長が「いろは蔵パークの次は、旧清水屋を中心とする中町商店街の再生だ」などと発言したことを紹介した。
そして「市長の祝辞からは破産者所有不動産と、それを取り巻く周辺エリアの再生に前向きな姿勢で取り組んでいきたいという意思が感じられた」と説明した。
市は、酒田商工会議所など地元経済団体の関係者でつくる「旧清水屋エリアを核とした中心市街地再生協議会」(会長・加藤聡同商議所会頭)と連携し、独立行政法人都市再生機構の協力も得ながら、中町地区の方向性を検討し、年内に「まちなかグランドデザイン(全体構想)」を策定する。
これに関連して市都市デザイン課から加藤管財人に▼破産者所有不動産の財団放棄の延期は、いつまで可能か▼財団放棄の延期の要件は何か▼破産者所有不動産を、財団放棄後に購入することは可能か▼その場合、どの時期にどのような方法で行うのか▼それまでの間の破産者所有不動産の管理は誰が行うのか―などといった質問が寄せられた。
市都市デザイン課と加藤管財人は5月14日、こうした質問を含め、破産者所有不動産と破産手続きの関係ついて、書面と面談で意見交換を行った。
その際、加藤管財人は、都会で生活している酒田市出身者の中から「酒田の大切な文化が消えていくのは辛い」「もっと(我々を)頼ってほしい」との声が上がっていることを紹介した。
そして中町商店街の再生に向けては、市内の個人や企業にとどまらず、広く都会の酒田市出身者や出身者が経営する企業にも▼事業主体に対する出資など金銭的な協力▼技術やアイデアの提供による協力▼専門的な知識や技術、企業の紹介による協力―などを求めていく必要がある、と提案したと報告した。
マリーン5清水屋の届出破産債権は現在、計約9億8132万円で当初からほぼ変わらない。しかし、届出破産債権よりも支払いが優先される財団債権は、第12回債権者集会時から、固定資産税が約1千万円、未払いの地代が約600万円上乗せされ、計約9506万円に膨らんでいる。