郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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三瀬矢引風力発電
矢引自治会が計画反対を決議
中止要望書を鶴岡市長に提出

 エネオスリニューアブル・エナジー(株)(東京都港区、竹内一弘代表取締役社長、資本金等287億円、以下ERE)が、鶴岡市矢引地区などで計画している「三瀬矢引風力発電事業」(仮称)に対し、地元の矢引自治会(長谷川伸恒会長、29世帯)は7月27日に臨時総会を矢引公民館で開き、反対を決議した。8月8日付で同発電事業の中止を求める要望書を皆川治鶴岡市長に提出した。20日には上郷地区自治振興会理事会が、同発電事業について決議する予定で、注目される。(編集部次長・土田哲史)

景観・健康・土砂災害を懸念

 矢引自治会の臨時総会では、「矢引地区に係る風力発電事業の施行」に賛成か反対かを全世帯に聞いた結果、反対19、賛成4、未定6の反対多数となり、同発電事業に反対することを決めた。
 反対理由は▼風車から矢引地区の民家までは約1・1キロしかなく、高さ172メートルもの風車は大きすぎる▼圧迫感を受ける景観となる▼騒音と低周波の影響による健康への懸念▼2022年に土砂災害が起きた西目地区と同じ地質のため、土砂災害が不安▼動植物への影響が大きい―など。
 同自治会では8月8日付で、事業の中止を求める要望書を皆川治鶴岡市長に提出した。

事業名変更は印象操作か

 同発電事業は、EREが昨年7月に公開した環境影響評価の準備書では、矢引、三瀬、由良、大荒、中沢、中山の6地区に囲まれた標高約200メートルの山中に、高さ最大172メートル、出力4200キロワットの発電用大型風車を最大6基設置する内容だった。その後、EREが6月11日に上郷コミュニティセンターで開いた住民説明会では、風車を1基減らして5基になっていたが、矢引地区の民家まで約1・1キロしか離れていないことには変わりがなかった。
 さらに、長谷川矢引自治会長が同日の説明会で行った質問に対し、6月27日に届いたEREの回答書では、事業名から矢引の地名が外されて「三瀬風力発電事業(仮称)」となっていた。
 長谷川会長は「なぜ名称が突然変わったのか分からない。風車の風下に位置して、騒音などの影響を最も受けるのは矢引地区。矢引の地名を外して、あたかも『矢引地区は事業と関係ない』と思わせようとしているのだとしたら、住民に誤解させるための印象操作ではないのか」と批判した。
 そして「EREは住民と意見交換をしても『問題ない』の一辺倒で、我々が抱いている不安を聞き入れようとしてくれない。事業内容には住民の意見が十分に反映されていないし、事業の内容を理解している住民も少ないように感じる。このような内容では到底受け入れることができない。EREには計画を中止してもらいたい」と話した。
 環境影響評価の準備書に対して環境大臣が2月に、経済産業大臣が4月にそれぞれ示した意見では、EREに▼地域住民などの関係者に丁寧かつ十分な説明を行う▼騒音や風車の影が影響する恐れのある住宅には、環境保全措置などを十分に説明する―ことなどを求めている。

環境団体等も中止求める

 同発電事業では、地元住民団体の上郷地区風力発電事業を考える会や、環境保護団体の出羽三山の自然を守る会、日本野鳥の会、同会山形県支部が、計画の中止を求める意見書を鶴岡市はじめ県とEREに提出している。
 風車による健康被害を研究している、田鎖順太・北海道大学地域環境研究室助教と、影山隆之・大分県立看護学科大学精神看護学研究室教授は、風車の騒音による睡眠への影響を憂慮する意見書を、鶴岡市長に提出している。

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