鶴岡市長選に立候補を予定する3人に、同市の重要課題について聞いた。掲載は順不同、敬称略。
皆川 治(50)
みなかわ おさむ
現・無所属/宇都宮大学農学部卒/森片
【1】鶴岡市の現状をどのように認識しているか。
粗付加価値額東北1位の製造業が牽引し、本市は県内トップの成長率(9.9%増)、また、一人当たり所得は324万円(6.4%増)であり、山形市(335万円)に迫る県内2位に躍進。他方で、全国の地方都市同様、少子高齢化が進み、地域経済社会に影響が生じている。
【2】当選したら最優先で取り組む政策は何か。
若者・女性・子育て世代に選ばれる街づくり。若い世代が地域で働き暮らすことができるよう、働く人の声を聴きつつ産業強化イノベーションを推進。西工業団地隣接地15ヘクタールを産業団地計画区域に追加しており、今年度用地造成等に着手、2027年度に分譲開始する。
【3】山形新幹線の庄内延伸について、吉村美栄子県知事が「要望する声をどんどん大きくしてくれれば、県も本腰を入れていける」「地元から要望を出してもらえると、県としてもやりやすい」と整備に前向きな発言をしているが、どのように対応していく考えか。
庄内地域の鉄道の機能強化の観点から、2市3町が緊密に連携して対応していくことを首長同士で確認している。過去に延伸活動に紆余曲折があった経緯も踏まえ、また羽越本線への投資やJRの意向など、情報収集を行う体制を庄内開発協議会に設けることとした。
【4】日本海沿岸東北自動車道は新潟、秋田両県境区間が開通していないが、整備促進のためにどのように対応していく考えか。
鶴岡側5本のトンネルのうち2本は貫通している。残り3本のうち鼠ケ関トンネルの工事が、鼠ケ関泥岩の脆弱地層のため難航していた。工法を再検討し、着実に前に進めて行くことを確認しており、道の駅整備を進めつつ全線開通に向け着実に予算を確保していく。
【5】庄内空港は国際線ターミナルの整備方針が示され、滑走路の延長も検討されているが、住民には東京線5便通年化や国内新路線の就航、格安航空便の復活などを望む声も強い。どのように対応していくのか。
年度内の期間増便5便化となっており、羽田線利用の底堅さを示している。庄内開発協議会、空港利用促進協議会の会長として、ビジネス、観光の利用促進を図る取り組みを総合的に進め、まずは通年の5便化、滑走路延長まで地域発展の施策実現に取り組んでいく。
【6】荘内病院は医師の確保や経営改善、南庄内地域の中核病院として他の医療・福祉機関との連携推進など、課題が山積している。どのように取り組んでいくつもりか。
今年度医師数は過去最高84人、定員増の看護専門学校等により人材を確保。高齢者需要への救急体制強化、国立がん研と連携したがん相談外来を推進。荘内病院が中核の地域包括ケアパスへ医療、介護施設等の参画を拡大、南庄内の基幹病院としての機能を守り抜く。
【7】風力発電は、羽黒山麓の計画撤回後も、市沿岸部の施設で貴重な野鳥の衝突死とみられる事故が発生し、新たな設置計画には住民が反対するなど問題化している。建設可能場所の色分けをするなど、秩序ある開発に向けてどのような施策を講じていく考えか。
三瀬、加茂、矢引の風力発電については、風車が連なる累積的影響が指摘されている。加茂は中止となり、矢引は、環境アセス法に基づく国からの勧告に事業者が真摯に対応する必要がある。住民の暮らしとの対立回避の観点からも浮体式洋上風力発電の実現可能性の検討を行う。
【8】少子高齢化の進む鶴岡市の財政を今後どのようにしていくつもりか。
文化会館建設で2020年度ピークの市借金(市債残高)を21~24年度に123億円減少させた。実質公債比比率7.9%(県内13市中6位)は、就任前の2016年度と同じ。合併時から想定の貯金(基金)を活用、歳入・歳出適正化を図り、活力を生む市民サービスを提供する。
【9】鶴岡市は開設して24年になる慶應義塾大学先端生命科学研究所に毎年3.5億円の補助金を出しているが、成果や鶴岡市への波及効果をどうとらえているか。今後どのように関わっていくべきか。
サイエンスパークは雇用600人を生み、波及効果は単年度50億円規模。2022年度にベンチャーの受け皿となるレンタルラボ20室を増設し計82室に。国採択の22億円「ガストロノミックイノベーション計画」等を推進し、研究開発から雇用を生み地方創生をリードする。
【10】小中学校を一緒にする義務教育学校を藤島地区に整備する予定だが、他の地区も含め市内の小学校統合を今後どのように進めるつもりか。
地域と共にある学校、友好都市等とつながるコミュニティスクールや、一律・画一的でない鶴岡型小中一貫教育の推進、小規模特認校や学びの多様化学校の検討を含む統合のみにとらわれない、学校の適正配置の検討を進める。教職員の働き方改革を更に推進する。
【11】鶴岡市は製造品出荷額等が県内1位となっているが、製造業の7割以上を情報産業が占め、大手進出電子企業に依存し過ぎている、と指摘する声もある。現在の産業構造をどう評価しているか。今後の産業構造をどうしていこうと考えているか。
電子デバイスの集積は鶴岡の大きな強み。行政がブレーキをかけるようなことをすべきではない。投資を呼び込みつつ、伸び行く経済を市民の豊かさを支える地場鶴岡産業の消費に向かわせ、鶴岡の文化、伝統産業を守る、地域循環型経済・鶴岡モデルを構築する。
佐藤 聡(57)
さとう さとし
新・無所属/会社役員/早稲田大学政治経済学部卒/茨新田
【1】鶴岡市の現状をどのように認識しているか。
人口減少や若者流出、財政難、中心市街地の空洞化など深刻な課題に直面している。しかし、本市の豊かな自然や食文化、歴史や人の絆といった強みは大きな可能性を秘めている。私はこの危機を新たな挑戦の契機と捉え、市民と共に未来を切り拓く。
【2】当選したら最優先で取り組む政策は何か。
子供の成長や子育て世代の支援として、0〜2歳児の所得制限無しでの保育料無償化など、子供を安心して生み育てられる環境を作る。同時に、企業誘致や民間投資を強力に働きかけ、鶴岡市に新たな価値、新たな仕事、新たなライフスタイルを創出する。
【3】山形新幹線の庄内延伸について、吉村美栄子県知事が「要望する声をどんどん大きくしてくれれば、県も本腰を入れていける」「地元から要望を出してもらえると、県としてもやりやすい」と整備に前向きな発言をしているが、どのように対応していく考えか。
山形新幹線の機能強化は、東京とのアクセス改善につながると期待されている。一方、日沿道の早期完成、羽越新幹線整備、羽越本線の機能拡充はいずれも急務であり、地域の声・実情を力強く国に伝えていく必要がある。
【4】日本海沿岸東北自動車道は新潟、秋田両県境区間が開通していないが、整備促進のためにどのように対応していく考えか。
東北の高速道整備は内陸地方を含めほぼ完成しつつある中で、日沿道の新潟県境が取り残されている。国や関係機関に対し工事予算の粘り強い獲得が重要である。地元市長の本気度を示し、これまでの自分の人的ネットワークを生かして精力的に活動していく。
【5】庄内空港は国際線ターミナルの整備方針が示され、滑走路の延長も検討されているが、住民には東京線5便通年化や国内新路線の就航、格安航空便の復活などを望む声も強い。どのように対応していくのか。
県議時代から訴えた庄内空港の国内線と国際線動線の分離が前進したことは大きな成果である。羽田発着枠政策コンテストを活用して東京線5便通年化を実現し、関西や名古屋路線の新設、LCC(格安航空)再就航も積極的に働きかけ、航空会社と連携して実現する。
【6】荘内病院は医師の確保や経営改善、南庄内地域の中核病院として他の医療・福祉機関との連携推進など、課題が山積している。どのように取り組んでいくつもりか。
地域医療の柱として医師確保や経営改善を進めるとともに、若手医師の育成に力を入れる。さらに、ICTや地域包括ケアパスを活用し、医療・介護・福祉の連携を一層強化する。県とも連携し、在宅医療や生活支援を充実させ、市民に安心を届ける体制を築く。
【7】風力発電は、羽黒山麓の計画撤回後も、市沿岸部の施設で貴重な野鳥の衝突死とみられる事故が発生し、新たな設置計画には住民が反対するなど問題化している。建設可能場所の色分けをするなど、秩序ある開発に向けてどのような施策を講じていく考えか。
地球温暖化対策と脱炭素社会の実現に、風力発電など再生可能エネルギー導入は不可欠である。自然環境や市民生活との調和を最優先に、住民の理解を得ながら円滑な導入を図る。ゾーニングについては国・県や事業者と連携し、地域関係者による検討を進める。
【8】少子高齢化の進む鶴岡市の財政を今後どのようにしていくつもりか。
市民との協働の「新総合計画」策定を通じ市政を根本的に見直し、行政コスト10%削減。単なる緊縮財政ではなく、改革で生み出した財源を医療・介護やインフラ更新など市民の命と暮らしを守る分野に重点投資。貴重な自主財源となるふるさと納税の倍増に取り組む。
【9】鶴岡市は開設して24年になる慶應義塾大学先端生命科学研究所に毎年3.5億円の補助金を出しているが、成果や鶴岡市への波及効果をどうとらえているか。今後どのように関わっていくべきか。
慶應先端研やサイエンスパークは、雇用創出、産業振興、地域経済への波及など本市の発展基盤。若い皆さんが日々研鑽を続け、新たな可能性に満ちている。大手食品企業の参画や大学関係者などによる共創成果が期待され、さらに後押しすべきと考える。
【10】小中学校を一緒にする義務教育学校を藤島地区に整備する予定だが、他の地区も含め市内の小学校統合を今後どのように進めるつもりか。
学校再編は教育委員会が主体で進めるべきであり、各校区の考えを最大限尊重する。児童減少により複式学級が生じることによる児童・教職員の負担、統合に伴う遠距離通学や地域活動の課題に配慮し、地域での議論と理解を深めながら進める。
【11】鶴岡市は製造品出荷額等が県内1位となっているが、製造業の7割以上を情報産業が占め、大手進出電子企業に依存し過ぎている、と指摘する声もある。現在の産業構造をどう評価しているか。今後の産業構造をどうしていこうと考えているか。
電子産業部門の設備投資に支えられ製造品出荷額が伸びていることは、関係企業の努力の賜物と敬意と感謝を申し上げる。単一部門に依存せず、多様な業界の成長を促し、基幹産業の農業との連携も強化し、農商工観の連携発展都市を目指した政策を進める。
喜多 恒介(36)
きた こうすけ
新・無所属 会社経営者/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了/荒俣
【1】鶴岡市の現状をどのように認識しているか。
多様な食文化、出羽三山の精神文化、サイエンスパークと非常に豊かなものを持っているが、少子化によって持続可能な状態では無くなりつつある。このままではこの豊かな鶴岡の様々なものが次世代に継承されない、そのような危機意識を感じている。
【2】当選したら最優先で取り組む政策は何か。
当選したら最優先で取り組む政策は若者誘致、Uターン、Iターンの促進。そのために必要な教育の魅力化、旧町村を中心とした空き家活用と住宅環境の整備、医療の信頼の回復、東京からの企業誘致、大学・高校誘致、大人のリスキリング、この大きな方向性を考えている。
【3】山形新幹線の庄内延伸について、吉村美栄子県知事が「要望する声をどんどん大きくしてくれれば、県も本腰を入れていける」「地元から要望を出してもらえると、県としてもやりやすい」と整備に前向きな発言をしているが、どのように対応していく考えか。
「天候で止まらない電車」として鶴岡に交通手段が伸びていくことは、観光上もビジネス上も非常に好ましいこと。酒田や庄内の市町と連携して話を進めていかなければいけない。交通網の発達は人口流出の契機にもなるため、積極的に地元住民と議論を交わしながら鶴岡の魅力を最大限活かした交通網の形成を進めていく。
【4】日本海沿岸東北自動車道は新潟、秋田両県境区間が開通していないが、整備促進のためにどのように対応していく考えか。
日本海沿岸東北自動車道であったり、新潟、秋田両県境区間の開通に関して、非常に重視して取り組んでいかなければならない。そのために人への投資を最優先しながらも、この庄内地域に、しっかりと道路を通していくことの重要性を地域住民と深く対話しながら、県及び国に対して訴えかけ進めていく。
【5】庄内空港は国際線ターミナルの整備方針が示され、滑走路の延長も検討されているが、住民には東京線5便通年化や国内新路線の就航、格安航空便の復活などを望む声も強い。どのように対応していくのか。
庄内空港に多くの方々が国内、国外から来ていただくことは望ましい。そのために航空便をどんどんと増やしていく、そういった方向性は持っていく。並行して庄内地域に多くの人が春夏秋だけでなく、冬も来たくなるような観光環境の整備、そして東京と連携したビジネス環境の整備を行っていかなければいけない。
【6】荘内病院は医師の確保や経営改善、南庄内地域の中核病院として他の医療・福祉機関との連携推進など、課題が山積している。どのように取り組んでいくつもりか。
荘内病院の医療問題の肝は、医療従事者がどれだけ働きやすい、魅力ある職場として機能していくかが非常に重要。荘内病院の組織風土改革・経営改革、市からの権限移譲、関係機関とのさらなる連携の拡大・深化を進めていく。医療従事者、スタッフ、患者の皆さんが鶴岡の医療に安心と信頼を抱ける仕組み作りを目指す。
【7】風力発電は、羽黒山麓の計画撤回後も、市沿岸部の施設で貴重な野鳥の衝突死とみられる事故が発生し、新たな設置計画には住民が反対するなど問題化している。建設可能場所の色分けをするなど、秩序ある開発に向けてどのような施策を講じていく考えか。
そもそもこの庄内地方がどのような景観、自然環境、あるいはエネルギーの自給を50年後、100年後のビジョンとして描いているのか、まずはここを住民の中で合意を取っていかなければならない。そういった大きなビジョンに対する議論なしに開発を進めていくことは非常に早計であると考えている。
【8】少子高齢化の進む鶴岡市の財政を今後どのようにしていくつもりか。
少子高齢化の進む鶴岡市の財政は年々厳しくなっている。そのために鶴岡として、市として「稼ぐ鶴岡」を掲げ、首都圏からの企業誘致、若者移住の促進、ふるさと納税の拡充、あるいは庄内の他市町と連携した「少子化解決のための施策に対する補助金、予算の確保」を県、国と連携して行っていかなければいけない。
【9】鶴岡市は開設して24年になる慶應義塾大学先端生命科学研究所に毎年3.5億円の補助金を出しているが、成果や鶴岡市への波及効果をどうとらえているか。今後どのように関わっていくべきか。
成果や波及効果は未だ発展途上であると考える。単なる研究施設に留まらず、農産物のブランド化、研究成果の商品化、様々なサービスへの応用、工業地域との連携等、相乗効果を生み出していくフェーズに、この4年間はあると考えている。それらを通じて投資によって生まれた経済成長の果実を市民に還元していくべき。
【10】小中学校を一緒にする義務教育学校を藤島地区に整備する予定だが、他の地区も含め市内の小学校統合を今後どのように進めるつもりか。
旧町村各地域に魅力的な教育なしに、若者が移住することはない。市内の小学校の統廃合に関してもこれら小中学校を極力残していくのみならず、地域資源を活用し、「日本で有数の魅力ある教育機関」にしていくべく、教育委員会と鶴岡の外部の支援団体・企業と連携し、取り組みを進めていくべきだ。
【11】鶴岡市は製造品出荷額等が県内1位となっているが、製造業の7割以上を情報産業が占め、大手進出電子企業に依存し過ぎている、と指摘する声もある。現在の産業構造をどう評価しているか。今後の産業構造をどうしていこうと考えているか。
大手電子企業のみならず中小規模でも高付加価値な製造品を生み出すべく、サイエンスパークか東京のITベンチャー、AI企業と連携しながら持続可能な高付加価値の工業製品を出荷できる強い産業を目指していかなければならない。一次産業、情報産業を含めて他分野との共創やイノベーションを重視していくべきだ。