遊佐町
採掘面積縮小も反対の声相次ぐ
鳥海山麓の採石計画で意見交換会
建設・採石業者の川越工業(株)(秋田県にかほ市、川越恵次代表取締役)が、鳥海山麓の遊佐町吉出臂曲地内の所有地で計画する岩石採取事業を巡り、同社が採掘面積を縮小して実施したいとする事前協議書を町に提出したことを受け、同町は10月28日夜、町稲川まちづくりセンターで町民意見交換会を開いた。参加した町民約30人からは、計画に反対する意見などが相次いだ。
同社は今年3月11日付で、標高390メートル地点の事業面積2万5646平方メートルのうち採掘区域8883平方メートルを最大30メートルの深さまで掘削したいとする事前協議書を町に提出した。その際、同社は「標高319メートル地点に地下水脈があるが、同329メートルまでなら地下水への影響を及ぼさずに掘削は可能」などとする秋田大学の分析と考察も添付した。
これを受け町は町水環境保全審議会の意見などを踏まえ、5月26日に事前協議書の対象事業は、事業を実施できない「規制対象事業に該当する」と認定した。
同社は9月25日付で、採掘区域を当初計画から約1千平方メートル縮小して7889平方メートルとする、とした事前協議書を再び提出。同社は9月30日、町が制定する遊佐町の健全な水環境を保全するための条例(以下、水環境保全条例)に基づく住民説明会を、町生涯学習センターで開いた。

計画に反発する意見や要望が続出した
町民意見交換会では、参加者から「規制対象事業に認定し、災害が起きないよう早急に跡地整備を進めるべき」「ほとんどの町民は『(岩石採取事業の阻止に向け)できることは何でもやる』と思っている。町民が味方に付いていると思って、頑張ってほしい」「町の水源環境を守っていく中で予防原則の考え方は避けて通れない。この考え方を主張していかなければならない」「(町は)法的な部分もかみ砕いて、町民に分かりやすく説明する必要がある。そうしないと感情論だけで『採石は駄目』となってしまう」などと、同社の計画に反発する声や要望が続出した。
髙橋務副町長は、町水環境保全条例で、地表から地下2メートルの深さを超える土石の採取を認めていないことに言及し「過去の裁判で相手方は科学的な根拠を理由に攻めてきた。2メートルは一定の基準としながらも、水源涵養機能に影響があることを根拠にしなければ、結果がどうなったか分からなかった」と振り返った。
さらに予防原則の考え方にも触れ「予防原則だから絶対に駄目、ということではなく、科学的知見の充実に努めることによって、予防原則を実態のあるものにしていく」とも説明した。
そして「単に条例の字面だけでは勝てない。湧水が入り込む横堰の水位などの調査を継続して行い、現場を見ながら対応していく」との考えを示した。
意見交換会は、事前協議書の内容を町民に説明し、出た意見を町の判断材料の一つにしようと開いた。同社は2016年に計画した採石事業が規制対象事業に認定されたことから、町を提訴。最高裁は22年に同社の訴えを棄却している。
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