郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

本紙単独インタビュー
幅広く国会議員にインフラ整備要望
五十嵐一彦鶴岡市議会議長に抱負聞く

 11月6日の鶴岡市議会臨時会で新議長に選ばれた五十嵐一彦議長(68)=同市鼠ケ関=が17日、本紙の単独インタビューに応じた。五十嵐議長は人口減少への対応や財政問題を市の課題と認識し、日沿道などのインフラを整備するための要望活動に意欲を示した。議員定数削減の検討も近い将来に必要と話した。佐藤聡新市長とは緊張関係を保持し、「納得のいかない議案を出してきたら、今までと同じように付帯決議なりを行っていく」と述べた。(編集部次長・土田哲史)

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インタビューに答える 五十嵐一彦 議長(68)

人口減少下に市民生活守る政策重要

―鶴岡市の現状をどのように認識しているか。
 人口減少が最大の課題だが、どこの自治体を見ても残念ながら有効な対応策は見つけられていない。ならば現実を直視して、人口が減っても市民の安全・安心な生活を確保できるようにしていかなければならない。そのような政策に重点を置くべきと考える。鶴岡市は市域が広い。各自治会の運営をどう維持していくかが大きな課題となっている。
 財政問題も大きな課題。2024年度決算は大幅な赤字となった。加えて今後は給食センターや図書館、義務教育学校と、大きな整備事業も控えている。行財政改革のしっかりした方針が当局に求められている。議会もチェック機能を果たしながら、市民の声を集約した提言を行っていくことが重要と考えている。
 給食センターは、私も一般質問で「なぜ確実に縮減できる運営方式を採用しないのか」と言ってきた。できればもう一度検討していただきたい。

高速交通委を設置の意向

―議長の任期中に取り組みたいことは何か。新たな特別委員会を設置する意向は。
 工事が中断した状態にある日本海沿岸東北自動車道や、庄内空港の滑走路延長、そして羽越本線の高速化など、鶴岡市の発展に欠かせないインフラの整備促進のため、市議会12月定例会で、高速交通等対策特別委員会を引き続き設置しなければいけないと考える。それ以外の特別委員会の設置は今のところ考えていない。
 インフラを整備するために有効な要望活動をやっていかなければならない。単に財務省や国土交通省に要望書を持っていっても物事は進まない。政治的に動かしていくことが必要。
 まずは国会議員に動いてもらうのが一番。国会の与党の枠組みは変わろうとしている。それはある意味でチャンス。自民党の国会議員に限らず、インフラ整備を先に進められる可能性があるところがあれば、どんどん要望に行くべきだ。
 庄内のインフラ整備が遅れているのは間違いない。そこはしっかりと言っていく必要がある。新潟県村上市とも連携して取り組んでいかなければならない。
 12人の新人議員が加わり、良い意味で議会が活性化されることを期待している。9月定例会で制定された、議会の最高規範である議会基本条例を議会運営の中心に据えて、これまでの反省を踏まえた上で市民の理解を得られる議会運営に取り組んでいきたい。
 これまでの議会は非難合戦のようになることもあり、市民から批判を受けた。議員になった人は、鶴岡を良くしたいという気持ちは同じ。それを前提とした上で、お互いの考えの違いを議論していけばよいのではないか。そういう雰囲気を作っていきたい。

定数削減を近い将来検討

―現在の議員定数と議員報酬は適正と考えるか。
 現時点では適正と考えているが、近い将来に定数の削減を検討していく必要があると考えている。人口は間違いなく減っていくので、将来的には人口規模に合わせた議員定数にしていく必要性が出てくる。他市の現状を見ながら検討する。

先の百条委を真摯に反省

―前市長を巡る百条委員会は、運営方法や長期長時間の開催に、市民から批判が聞かれた。議会への信頼を揺るがした面もあった。
 意見が真っ向から二つに分かれた特殊なケースだったことが原因の一つだと思うが、市民の理解を得られなかったことは、真摯に受け止めて反省しなければいけない。
 問題を調査して結論を出すことが、あるべき百条委員会の姿だが、今回はそうはならなかった。問題を明らかにするには専門知識や法律の知識が必要で、議員の知識だけで結論を出すのはハードルが高かった。
 知り合いの弁護士に何度も相談して対応した現実があった。告訴までもっていくには、相当の裏付けが必要となる。そもそも百条委員会などを設置する必要がない、市政運営や議会運営を目指すことが重要。

政務活動費の改善策守る

―市民には不透明に映る政務活動費などの運営方法を見直すつもりはあるのか。
 2022年に問題の指摘があってから、かなりの見直しを行った。問題になった交通費(ガソリン代)はどうしても用途があいまいになっていた。通信費も用途が分かりにくいので修正してきた。パソコンと備品代も、はっきりと説明できるものでなければ認められなくした。会派の中でチェックし、議会事務局でもチェックして、問題とならないようにした。改善後のマニュアルをしっかりと守って運用していく。
 一方で会派広報の配布には経費が50万~60万円ほどかかる。課題を調査するための旅費もどうしても必要。それら必要なものには政務活動費を適正に活用して、議員の資質を上げていきたい。もちろん新たに課題が出てきたら速やかに修正してかなければならない。

常任委で市民と意見交換

―会派横断的に市民と意見交換し、情報を提供する議会報告会を開くなど、市民の意見の吸い上げや市民への情報公開など、オープンな市議会を推進するために、何か新しいことを考えているか。
 議会基本条例の第5~7条に盛り込まれているので、まずはしっかりと実行していくことが重要。各常任委員会で必ず意見交換会を開くことになっている。そこで課題を吸い上げて必要な提言を行っていく。鶴岡市議会として目的達成のために取り組んでいく。

歳出削減、不利益には反対

―佐藤聡市長の公約、行政コスト10%カットをどのように受け止めているか。
 財政健全化のために、そういった方針を打ち出したのだと思う。佐藤市長の実行力に期待している。行政コスト10%削減は、厳しい財政状況の中で必要だが、個別の内容は市民にプラスになっているか、不利益・不公平が生じる可能性はないかなどをしっかりチェックしていく。市民にマイナスとなることには反対していく。なんでもかんでもカットしていいものではない。

命守るインフラ投資必要

―少子高齢化が止まらず、市の財政は厳しさを増していくと思われるが、公共施設の適正化をどう考える。
 2017年に策定された鶴岡市公共施設等総合管理計画が、23年に改訂されている。人口の推移ももちろん考慮した計画を作っているので、まずはこの計画に沿って適正に管理されていくものと認識している。
 全国で道路の陥没事故などが大きな問題となっている。道路など施設の長寿命化が行われているが、それが本当に問題無いかをきちんと見ていく必要がある。人命に関わる事故につながることがあってはならない。
 国は施設に定められた寿命が来たら、躊躇無く交換すべき。それをしないで長寿命化で乗り切ろうとしたのは、国の間違いだったと個人的には思う。人命に関わるインフラは投資が必要。そこは国に要望していかなければならない。

市長との緊張関係を保持

―前市長の下では、予算案が付帯決議されるなど、市長と市議会には緊張関係が見られ、評価する声も聞かれた。新市長の下では与党とみられる議員が過半数を占める。議会の監視機能をどのように保っていくつもりか。
 野党とか与党といった意識は無い。議会と市長等との関係も、議会基本条例の第4章に明記されている。第8条では「議会は、議会審議において、市長その他の執行機関と対等な関係を保持し、市長等の事務執行の監視及び評価を行うものとする」とある。
 対等な関係を保持するとは、緊張関係を保持すると言ってもいいと考える。監視機能はしっかりと保っていく。
 私が所属した創政クラブは、皆川治前市長と野党として対立する立場にあった、と市民に思われていたかもしれないが、我々からすると野党という意識は無かった。議案の中身が良いか悪いかだけを見ていた。
 それは佐藤聡市長となっても同じ。納得のいかない議案を佐藤市長が出してきたら、今までと同じように付帯決議なりを行っていく。そこは変わりない。
 市長が代わり、市議会には新人12人が加わった。鶴岡市は間違いなく変革の時期にある。変わっていく方向を間違えず、市民が希望を持てる方向となるように取り組んでいく。

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