郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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山形新幹線庄内延伸
吉村県知事「大きな動きの始まりの日」
庄内、最上の市町村長ら調査求める

 吉村美栄子山形県知事が山形新幹線の庄内延伸に前向きな見解を示している中、庄内、最上両地域の全市町村長と酒田、鶴岡、新庄の3商工会議所会頭は8日、同県知事に対し、庄内延伸に向けた調査などを早期に実施するよう求める連名の要望書を提出した。これを受け吉村県知事は「大きな動きが始まろうとしていると感じている。新たな調査に関して即答はできないが、地域での盛り上がりを活発にしていくことが将来につながる」と述べた。吉村県知事が庄内延伸に前向きな見解を示して以降、本格的な要望活動がようやく始動した形だが、今後の機運醸成を含め、庄内延伸を主導する酒田市のリーダーシップが問われることになる。(編集主幹・菅原宏之)

要望書に16人が名連ねる

 この日、県庁を訪れたのは、庄内、最上両地域の10市町村長と金山町副町長、新庄商工会議所会頭、酒田商工会議所副会頭の計13人。公務だった鶴岡、新庄両市長と、鶴岡商工会議所会頭の3人は欠席した。
 酒田市が主導する形で各市町村長に働き掛け、日程調整などにも動いたことから、矢口明子酒田市長が代表して吉村県知事に要望書を手渡し、内容について説明した。

写真
吉村県知事に要望書を手渡す庄内、最上両地域の市町村長ら

 要望書では、庄内延伸によって期待できる効果に
①県都を含む山形県内全域(庄内、最上、村山、置賜)での交流が活発化し、庄内と内陸における企業活動が盛んになり、観光需要も高まることから、地域経済がさらに活性化する。
②インバウンド(訪日外国人客)が内陸と庄内を相互に移動できる環境が整い、インバウンド観光の基盤が強化される。庄内空港、酒田港、羽越本線との交通ネットワークが連携強化され、広域観光が促進される。
③奥羽新幹線と羽越新幹線を結ぶ「横軸」の機能を担い、内陸から庄内を経由することで秋田・新潟との交流が促進され、内陸とのつながりも強化され、地域間の相互交流が活発化する。
④県などが早期整備を目指す山形新幹線米沢トンネル(仮称)の整備検討は、山形新幹線の利便性を高める効果が期待され、庄内延伸は、その効果を県全域の発展につなげることができる。
―の4点を挙げた。
 そして地域でも機運醸成に取り組み、県内の鉄道ネットワーク機能強化の議論を盛り上げていく方針を示した上で「羽越本線・陸羽西線への影響などの確認も含め、山形新幹線庄内延伸について、具体的な調査などの取り組みを早期に実施すること」を求めた。
 要望書に名を連ねたのは、矢口酒田市長のほか▼佐藤聡鶴岡市長▼阿部誠三川町長▼富樫透庄内町長▼松永裕美遊佐町長▼山科朝則新庄市長▼佐藤英司金山町長▼髙橋重美最上町長▼森富広舟形町長▼新田隆治真室川町長▼加藤正美大蔵村長▼元木洋介鮭川村長▼加藤文明戸沢村長▼加藤聡酒田商工会議所会頭▼上野雅史鶴岡商工会議所会頭▼柿﨑力治朗新庄商工会議所会頭―の計16人。

地域の盛り上がり活発に

 要望を受け吉村県知事は、庄内における鉄道機能強化の経緯に言及し、01年度から05年度にかけて、新潟駅での同一ホーム乗り換えを含む羽越本線の高速化と、山形新幹線の庄内延伸について調査を行い、対首都圏、対隣県、県内の交流拡大の視点から評価した結果、羽越本線の高速化が優位との結論を得た、と振り返った。
 そして加速性の高い車両の導入や、新潟駅での同一ホーム乗り換えの実現、上越新幹線の最高速度の向上と、新潟駅での乗り換え時間の調整がなされた、と説明した。その結果として、酒田―東京間の最速の所要時間は、高速化の調査開始時点の3時間59分から、現在は3時間45分に短縮されている、とも解説した。
 その上で「全国各地で新幹線の整備が進み、移動時間の短縮が進む中では、庄内から首都圏につながる鉄道ネットワークのさらなる機能強化が必要と感じている」との認識を示した。
 庄内と内陸の移動についても触れ「新庄経由で時間がかかるなど移動しにくい状況があり、庄内と内陸の交通ネットワークの強化も課題と考える」と述べた。
 こうした状況を紹介した上で、吉村県知事は「庄内の鉄道機能強化については、さまざまな検討を進めてきたが、取り巻く状況が変化してきている。今後、どのような形が望ましいのか、地域で議論を盛んにしてほしい」との考えを強調した。
 そして「これだけの皆さんがおいでになり、大きな動きが始まろうとしているように感じている。ぜひ大きなウエーブにしていってほしい。新たな調査に関して即答はできないが、地域での盛り上がりを活発にしていていくことが将来につながると思っており、今日がその始まりの日のような気がしている」と述べた。
 今後については「県としても、地域での議論も踏まえながら、引き続き庄内地域を含めた県内鉄道の機能強化を検討していきたいと考えている」と語った。

陸羽西線存続の起爆剤

 その後、出席者4人が庄内延伸の実現に向け意見や要望などを述べた。
 富樫庄内町長は、バス代行となっていた陸羽西線の一部区間が来年1月16日に再開されることに言及した上で「山形新幹線の延伸は、(陸羽西線の)存続に向けた起爆剤になるととらえている。地域住民の声を聞きながら庄内延伸に対処したいと思うので、県知事を先頭に対応していただければありがたい」と話した。
 加藤戸沢村長は「村には、『鉄道文化・西線文化を語らずして戸沢村は語れない』くらいに、鉄道文化が息づいている。山形新幹線が庄内に延伸されれば、交通の利便さを、最上川船下りといった観光に生かせるので、実現に向けてお力添えをお願いしたい」と要望した。
 村上浩酒田商工会議所副会頭は「庄内は県都に遠く、東京にも遠いことから、県都を通して首都圏につながるようにしてほしい。庄内空港の庄内―羽田便も風の影響で欠航が多いので、ぜひ(庄内延伸が)早期実現できるよう、ご協力をお願いしたい」と語った。
 元木鮭川村長は「高速鉄道、高速道路ができることによって、県都への1時間ルートが確立されるのでないか思っている。外航クルーズ船の酒田港への寄港回数が増えており、訪日客を内陸に呼び込むためには、高速の鉄道整備は絶対に必要になる」と指摘した。
 要望終了後、矢口酒田市長は本紙の取材に「機運の醸成を図っていきたい。(そのための手段として)有識者を招いた講演会の開催などを、これから考えていきたい」と話した。
 庄内延伸を巡っては、吉村県知事が5月14日に本紙が行った単独インタビューの中で「山形新幹線の新庄から庄内への延伸は、大いにあると思っている」との見解を示した。
 県議会6月定例会予算特別委員会でも、梶原宗明県議会議員(酒田市・飽海郡区)の質問に答え「庄内から首都圏につながる鉄道ネットワークのさらなる機能強化が必要。今後、どのような形が望ましいのか、地域でも議論を盛んにしてほしい」と述べていた。

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